本日の日経の報道によれば、中国レノボ・グループは富士通のパソコン事業を傘下に収める方針を固めたとのこと。合弁会社を設け、レノボが過半を出資する方向で調整しており、富士通は中国や台湾のメーカーが勢力を拡大するパソコン事業で単独で生き残るのは難しいと判断した様子。レノボに主導権を渡し、主力のIT(情報技術)サービス事業などに経営資源を集中するとか。
先ずは最近のパソコン業界を見てみたい。
IT調査会社の米ガートナーが発表した2016年のPC出荷台数予測(世界)は2億3200万台。2015年に比べると約5000万台の減少。そして、2012年の3億4300万台に比べると32%減と、約3分の2の規模にまで落ち込むことになる。わずか4年で1億台以上も減少となる。
販売金額では、2012年の2190億ドルに比べて、45%減となる1220億ドルと、半分近くまで縮小。低価格向けの製品へと売れ筋がシフトしていることを示す結果となり、PCメーカーにとっては収益確保が厳しい状況であることがうかがい知れる。
市場低迷の理由は、先進国市場での需要が頭打ちになったのに加えて、新興国の景気低迷などが原因と見られる。
基本的には、部品組み立てを中心としたコモディティ化が進み、いかに生産効率を高めるかが勝負となる縮小市場である。
その中で、スマートフォンやタブレット端末の台頭もあり、生産台数も大きく減少させていることから、基本的には再編が必要な業界と考えて良い。
既に国内メーカーが国内シェアで議論することはナンセンスであり、グローバルでのシェア争いをする必要がある業界である。
その中で、TrendForce2015年の世界シェアは2015年の世界の世界のノートPC出荷台数は1億6,440万台で、2014年の1億7,550万台から減少。上位6社で70%以上のシェアを獲得している業界である。
2015年のシェアトップはヒューレット・パッカード(HP)の20.5%、次いでLenovoの19.9%、Dellの13.7%、そしてAppleが10.34%で続き、Apple、OEM/ODM業務で伸ばすASUSやaserが続く。
いずれにしろ、国内メーカーは東芝以外はその他の10.3%に含まれ、すでにグローバルでは競争力を失っていると考えて良い。
その中での今回の富士通のレノボ傘下ということだが、富士通は昨年、東芝、VAIOとの統合を画策したが、3社の主導権や生産拠点統合の難航から、結局白紙になっている。
経営を考える前提は事業構造、市場環境、競争環境の理解であるが、製品がコモディティである以上、コストに手を付けざるを得ない。
その中で、組織の情理と合理の折り合いを付けながら決断するのが、
リーダーの役目のはずである。
何かを「捨てる」というのは究極の選択であるが、一番効果が大きい。
今回富士通は3社統合失敗の反省も踏まえながら、
レノボ傘下を決断できたのは英断だと思う。
そうなると、残された東芝、VAIO、その他の国内メーカーの決断の遅さにフォーカスが当たると共に、徐々に提携先の選択肢も減っているところから、今後の経営判断をどうするのか見極めたいところである。
(2016年10月6日「田中博文オフィシャルブログ」より転載)