かつて中国に住んでいた筆者が、日本からやってきた大学生をある観光名所に案内したときのことだ。
その学生が建物の落書きを指差して訪ねてきた。「これってどういう意味なんですか?もしかしてそのままの意味...?」
そこには中国語で「我愛老婆(我爱老婆)」と書かれていた。
■何もおかしいことはない
確かに日本人ならば「高齢の女性を愛する」という風に読めるかもしれない。だが実際は違う。「老婆」は、中国語では「妻」という意味があるのだ。
この落書きは、単純に妻への愛を記しただけにすぎない(もちろん落書きは許されないのだが)。ちなみに「夫」を示す対義語は「老公」だ。
そのほかにも「配偶者」を表す中国語には「愛人(爱人)」もある。中国人から「昨晩は愛人とご飯を食べましてね」などと言われてもギョッとする必要はないのだ。
このように、漢字文化を共有する日本人だからこそ間違えがちな中国語は少なくない。数ある中からいくつかを紹介したい。
■「新聞」「猪肉」のワナ
間違えやすい中国語は枚挙にいとまがない。例えば中国人から「不用勉強了(不用勉强了)」とメッセージを送られたら、「勉強しなくてもいいの?」と思いがちだ。
ところがこれも全然違う。「勉強」は「無理をする」という意味。つまり「無理しないでね」というメッセージなのだ。
ほかには「新聞(新闻)」も落とし穴。これは新聞紙ではなくニュースそのものを指す言葉。日本語でいうところの新聞は「報紙(报纸)」だ。
「前年」は今より1年前だと思いがちだが、これは日本語で「一昨年」のこと。1年前は中国語では「去年」と書く。わかりにくい。
どんどん挙げていこう。「猪肉」は「豚肉」を指すし、「左右」は「〜ぐらい」。時間を聞いて「5点左右」と言われたら「5時くらい」ということだ。「住飯店(住饭店)」はレストランの住み込みではなく「ホテルに泊まる」と訳すのが正しい。
服屋で「女装」と書いてあるコーナーは「レディース」という意味。御察しの通り男物を示す「メンズ」は「男装」だ。「約束」は取り決めのことではなく「制限」などと訳す。
中国に旅行に行くとき「困ったら筆談すれば良い」と考える方もいるかもしれない。ただ中国語には、日本人にとって思わぬ罠があることにも注意が必要だ。