都会の喧騒を離れ、各地の名所に設けられたリモートオフィスを定額制で利用できるサービス「LivingAnywhere commons(LAC)」。
その可能性を知りたくて、私は伊豆半島・下田(静岡県)の施設を訪ねた。
飲食店の一角を改装したオフィス「LAC伊豆下田」の周りは南国情緒あふれる雰囲気。地元の子どもたちの楽しそうな声が聞こえる。リラックスしつつも、私の集中力は次第に高まっていった。
自分の仕事が一息ついたところで、予想外の「出会い」が生まれた。
昼食に地元の幸を味わった後、この施設を利用している別の会社員から、ワークショップに参加してみないかと誘われた。
施設は一度に色んな企業や団体の人たちが利用するので、交流も兼ねて自由参加型のイベントが度々開かれるのだという。
今回のワークショップは、LACを利用している東急エージェンシーが主体となって開いた。
東京のオフィスでは、取引先を除けばほかの組織の人と話すことはまれ。ワクワクしながら参加することにした。
私を含め約10人が室内に入ると、机の上に置いてあったのは、なんとレゴブロックだった。
「レゴ®シリアスプレイ®(LSP)」というワークショップで、チームビルディングやクリエイティブ開発などを狙っており、世界中で企業研修などに導入されているという。NASA(アメリカ航空宇宙局)も取り入れたことがあるというから驚きだ。
「レゴ…。何年ぶりだろう」。戸惑いながらも触ってみると、面白い。
与えられたテーマは「LACとコミュニティーマネージャー」で、童心に戻ったようにレゴを組み上げていった。
「このワークショップは都内でもできますが、いつもと違う場所で実施することで一味変わる。より発想が解放されるんです」そう話すワークショップのファシリテーターを務めた東急エージェンシーの藤居誠さんの言葉に、私は納得した。
ワークショップは、ほかの企業の人たちと話すきっかけにもなった。
その一人、東急エージェンシーの高山慶子さんは、数日前から家族と滞在しつつ、リモートワークを行ったそうだ。
普段は都内で働いており、リゾート地でのリモートワークは今回が初めて。
「目の前に素敵な環境があると、集中して早く終わらせたいとより生産性を意識した働き方になりました」と話した。
高山さんは、仕事だけでなく、ほかの人との出会いや交流という点でも、LACのメリットを感じているようだ。
「今朝、LACに泊まっている知らない人と洗面所でばったり会って。漁業組合が魚の競りをやっていると教えてくれました。子どもと一緒に行こうと思います」
ほかの人も、仕事を早く済ませて釣りに行く人や、夕暮れ時に砂浜を散歩する人もいた。
東京ではおよそ考えられないワーク&ライフスタイルがここにはある。
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