女性がハイヒールやパンプスを職場で履くことを強いられる「習慣」に反対する「#KuToo」運動が広がっている。
そんな中、男子大学生でYouTuberの白石楓さん(21)が、パンプスを一日中はいて足がつらいことを「実証」する動画を公開したところ、大きな反響を呼んだ。
ダイジェスト版をTwitterで投稿すると143万回再生され、投稿そのものも約3万6000回リツイートされた。
YouTubeで公開したフルバージョン(約9分)は10万回近く視聴されている(7月9日午後8時半現在)。
撮影のきっかけは就活中の女性たちの声だった。「パンプスが痛い」。彼女たちは口々にそう訴えていた。
「話題になるかも」。ちょうどYouTubeを始めたばかりだった白石さんは、大学の友人の江口雅教(まさのり)さん(23)と企画を練った。
ヒールが4〜5センチ程度のパンプスをAmazonで購入、6月に撮影した。
#KuTooのことは知ってはいたが、この頃はそんなに気に留めていなかったという。
動画のタイトルは「ヒールが辛いのは本当か?男が実際に履いて検証!」。白石さんがパンプスを履いたままお台場に遊びに行くなど、一日を過ごすという企画だった。
「ハイヒールと言っても、足が痛くなるために作られてはいないから」。歩き始める前、白石さんはそう高をくくっていた。
実際に履いても、窮屈さや痛みは感じなかった。つま先への圧迫感があっただけだった。
自宅から最寄りの柏駅(千葉県)まで歩くこと10分。駅に着いたころ、つま先が痛くなっていた。それでも「これくらいなら耐えられるだろう」と余裕をみせていた。
ところが、新交通「ゆりかもめ」で目的の台場駅に向かう間、ずっと立っていると、痛みに耐えられなくなった。
座りたくても席は空かず、結局1時間20分間、立ちっぱなしで過ごすことに。台場駅に到着するやいなや、ベンチを探して座り込んでしまった。
苦痛に顔をしかめながらも、お台場を散策していたが、腰がだんだん張ってきた。
つま先は常に「子犬か何かに嚙まれているような」痛みを感じるようになり、かかともついに悲鳴をあげた。
「けがしながら歩いている」。動画の中ではそう表現した。
企画開始から約4時間後、ついにギブアップ。足にはすり傷や水ぶくれができていた。
企画では「1日中パンプスを履く」としていたが、達成できなかった。
スニーカーに履き替えたときは、「こんなに素晴らしく快適な履物があったのか」と思ったという。
白石さんは動画を次のように締めくくった。
「(ハイヒールを)履く、履かないは自分の選択だし、『キツいって分かってんだったら履かなきゃいいじゃん』って意見もあるかもしれないけど」、「世の中にはパンプスが制服的な感じで(あって)」、「(自分は履かないと言い切れる)っていう、みんながみんな、強い人間じゃない」
「仕方なく履いている人もたぶんいると思う」
男も同調圧力に加担
高校まで部活動で野球をしていたという白石さん。練習はスパイクで、足の裏がジンジン痛むことがあった。
それでも、「スパイクも足の負担が大きいと思うけど、パンプスを履く痛みはレベルが違うと感じた」と話す。
動画の編集作業をする中で、#KuTooが社会問題化していることに気がついた。
「自分がパンプスを履く前は、正直他人事。履いている本人が声を上げて頑張ればいいと思っていた。でも履いてみて、パンプスを履かなきゃいけないという同調圧力を作る側には男も加担している、と思うようになりました。男は関係ない、ということはないんです」と話す。
7月3日に動画をYouTubeにアップロードすると、あっという間にSNSで拡散。YouTubeのチャンネル登録者数は、10倍以上の1300人にふくれあがった。
コメント欄には、女性からとみられる「痛みを分かってくれてうれしい」という感想や、男性とみられる「こんなに痛いとは知らなかった」という驚きの声が並んだ。
一方で、「(パンプスが)嫌ならそういう会社にはいるな」「サラリーマンもスーツに革靴だし、職種にあった格好がある」という趣旨のコメントもあった。
これについて白石さんは「ネクタイ、スーツや革靴などがつらいという人もいると思う。でもパンプスは絶対数が多いから声が上がるのでは。お互いが共感して、社会が変わっていけばいいと思う」と話している。
これからも白石さんと江口さんはYouTuber「トペコンヒーロ」として活動していくという。
検証動画にも折を見て挑戦する予定で、こう語った。「ラジオ番組が持てるようなYouTuberになれればと思っています」