身長100cmで、骨が折れやすく、歩けないので、電動車椅子に乗っている私。見た目のインパクトが強いのか、まわりからはちょっとのことで、例えばひとりで電車に乗っているだけでも「お出かけするなんて偉いわ!」と言われてしまいます。
「電車に乗らないと、お出かけができないのって、普通のことじゃないのかな」と思いつつも、自分が普通と見られていないことを改めて自覚します。そして、声を掛けてくれた人との会話で「私、5歳と3歳の子どもがいるんです」と言うと、かなり驚かれます。驚かれ過ぎて、話が続かないくらいです。
車椅子に乗っていても、お出かけもするし、恋をするし、子育てだってするのに。でもまわりの中では、障害者は何もできない、かわいそうというイメージが強すぎ。私は当たり前のように、朝起きて、トイレに行って、朝ごはんを食べて、子どもの支度をして、子どもを送り出し、仕事を始めます。
「がんばりすぎないために、頑張る」2児の子育て
できないことはたくさんあるので、ヘルパー制度を使いながらヘルパーさんに補ってもらいます。5kg以上の物は持てないので、あかちゃんが生後6カ月を過ぎるころには抱っこもできなくなるし、ベビーカーだって押せないし、子どもがキッチンのガスコンロをさわろうとしても「危ない!」と言ってさっと抱きかかえることができません。子どもがお茶をこぼしても、急いで雑巾を持ってきて床を拭き、子どもを着替えさせることもできません。
だから私なりのやり方で、毎日を乗り切ります。子どもも一緒にお出かけする時は、必ずヘルパーさんも一緒に。子どもも車椅子に乗ってもらい、ベビーカー代わりにお出掛け。キッチンはベビーゲートをして子どもは入れないようにして、子どもがお茶をこぼさないように家でもふた付きの水筒を使います。そうやって助けを求めながら、できないことを予想・工夫しながら、子育てします。
またボランティアさんや、近所の人たちにも助けてもらいます。手を貸してくれる人も初めは戸惑うので、具体的に「こうやってほしいです」とお願いします。そしてラッキーなことに、私が助けを求めることで、相手との会話がうまれ、意外にも相手が私に頼ってくることだってあるのです。信頼して頼ることで、相手からも必要とされるのです。
もちろん、私だって、自分のことは自分でしたい、人に頼むとかえってイライラすると思う時もあります。でも無理をしたら、骨がどんどん変形していくし、体の変形が進むと息もしづらくなるかもしれません。だからこそ、できることでも、疲れていたり、危ない時は、敢えて人を頼るようにします。「がんばりすぎないために、頑張る」がテーマです。
子どもにとっては車椅子のママが当たり前
ただ子どもたちは、待ったなし!いつでも、どこでも「ママがいい! ママやって!」のオンパレード。無理しないと決めていても、疲労困憊。イライラし、子どもをどなってしまうこともあります。子育てにはよくあることですよね。
そして、子どもたちは私を手伝ってくれる時もあるけれど、車椅子を押しているようで本当はただぶら下がって甘えているだけのことが多いのです。そして私の車椅子に一緒に乗りながら「ママ狭いから、もっと寄ってよ」と言うくらいです。
車椅子はママの物なのに、子どもたちは自分の物だと思い込んでいるみたい。だって子どもたちにとっては、車椅子のママが当たり前なのだから。そんな我が家のカタチが、子育てのいろいろなカタチの一つとして広まってくれるといいな。
私は骨が弱くて、歩けない障害があるけれど、それ以外の女性として、母として、コラムニストとしての私もいます。人は誰でもいろんな面を持っています。カテゴリー分けするのが便利なときもあるし、傷つくこともあります。だからこそお互いを理解して、繋がって、支え合う仲間(アライ=応援者、理解者、応援者)がほしいです。
風邪薬のないデンマークで気づいたこと
話は少し変わり、私はデンマークに留学をしていました。デンマークの友だちが来日した時、風邪薬のCMを見て、驚いたのです。「日本人は頭が痛かったり、風邪をひいても、仕事を休まないの?」と。デンマークでは基本、風邪薬がありません。一番の薬は休むことだと言われていて、頭が痛いとゆっくり休みます。
でも日本に住む私たち、休むって、難しいですよね。怠けているって思われないかな、誰かの迷惑にならないかな、って思いがち。頑張ることがいいことで、休むためにはもっともな理由が必要って思いがちです。風邪ぐらいは休む理由にならない、って思うことありませんか?
でも、人は誰でも、できること、できないことあるし、その日の体調によっても変わります。障害のあるなしに関係なく、誰でも、休むことを大切にして、無理をしない生き方ができたらいいのに。
そのためには、まずは自分が自分を大事にして、十分に休むこと。自分に余裕があると、相手が休んだときに「怠けている」と非難することなく、「おたがいさま」と思えるでしょう。子育ても同じです。大人が疲れていたり、時間がないと、怒鳴ってしまうことばかりだけど、余裕があると子どもに優しくなれます。
違うっておもしろい。いろんな人に読んでもらいたい『ママは身長100cm』
そんなことを綴った『ママは身長100cm』。子育てだけでなく、私の骨折エピソード、恋バナ、性教育、夫婦別姓などいろいろなことにもふれました。
いまママをしている人だけなく、子どもがいない人や、シングルの人、10代の人、20代の人、子育てを終えた人、そして男性など、いろいろな人に読んでもらいたいです。だって私はママ友も好きだけど、自分とは違う状況にいる人も大好き!
同じ状況にいる人だと、お互いを比べちゃって、苦しくなってしまうことがあるけれど、状況が違うと、逆に自然体でいられたり、素直に相手をほめることができるからです。ちがうってすばらしい! ちがうからこそ、理解し合えるし、支え合えるのです。この本を通して、違うのっていいね、違うっておもしろいね、そう思ってもらえると嬉しいです。
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ハフポストブックスの新刊『ママは身長100cm』(ディスカバー21)発売中。