■東京都の「子どもを受動喫煙から守る条例」
2020年の東京五輪までに屋内禁煙を、とWHOなどから求められながら、法整備がなかなか進まない日本。だが、国の法整備ではあれだけ禁煙に反対していた飲食店業界でも、東京都で条例化が進んでいることなどを背景に、独自に禁煙に踏み切る動きが加速している。2018年度のたばこ税の引き上げも検討されており、日本の喫煙を巡る環境は大きく様変わりするかもしれない。
2017年10月5日、東京都議会は「子どもを受動喫煙から守る条例」を可決した。2018年4月から施行される。
条例は子どもを受動喫煙による害から守るのが狙いで、以下の内容が柱となっている。
・子どもと同室の空間で喫煙をしないよう努めなければならない
・子どもが同乗する自動車内で喫煙しないよう努めなければならない
・保護者は受動喫煙を防ぐ措置が講じられていない施設に子どもを立ち入らせないよう努めなければならない
「罰則規定はないので強制力がない」「私的空間に介入」など、条例への批判はあるが、条例ができたことで、何がどう変わるのか。
■「喫煙席になさいますか」の問いかけは消える?
その一つが、飲食店での入店の案内だ。現状では、子連れ客にも「喫煙席になさいますか?禁煙席になさいますか?」と尋ね、大人が喫煙席を選べば、喫煙席に連れて行く。
だが条例では、受動喫煙を防ぐ措置のない施設に子どもを立ち入らせないよう求めている。このため、従来の対応を見直すところが出てきている。
ファミリーレストラン・チェーン「デニーズ」を展開するセブン&アイフードシステムの広報はこう説明する。
「子連れ客にはどちらの席がいいか聞くことなく、禁煙席に座っていただくことになるだろう。もし吸いたい大人がいたら、1人で喫煙席に行って吸っていただく。すでに受動喫煙条例が施行された神奈川県では、そうした対応をしている」
さらに東京都では、2019年に開かれるラグビー・ワールドカップの前に、飲食店も「原則禁煙」とする罰則つきの「都受動喫煙条例」の制定も目指している。
■加速する飲食業界の禁煙化
加えて、ファミリーレストランやファストフード業界を中心に、食事席はすべて禁煙とする「全面禁煙」に切り替えるところが増えている。
すでにロイヤルホストは2013年から食事席はすべて禁煙に、マクドナルドも2014年から全席禁煙としている。
追随するかたちで、ケンタッキーフライドチキンを展開する日本KFCホールディングスも店舗の改装にあわせ、計約1150店の全席禁煙をすすめている。
同社広報によると、直営店(約320店)はあと1,2カ月以内に全店で禁煙化が終わる予定だ。フランチャイズも9割以上は禁煙にした。「顧客の主体であるファミリー層に配慮した」(同社広報)という。
デニーズも全400店の約1割程度で食事席を禁煙にしたほか、「家族が来ることの多い週末を全面禁煙にする店も増やしている」(セブン&アイ・フードシステムズ経営企画室)という。
■職場でも禁煙化は進む
家族だけではない。職場でも禁煙化は進む。
勤務中の禁煙や忘年会やの歓送迎会など従業員同士の懇親の場は禁煙とする「禁煙ポリシー」を設ける企業が、ここ数年増えている。
全面禁煙のニーズが高まることから、禁煙化に消極的な居酒屋などでも禁煙化に踏み切るところが増えてくるかもしれない。