10月29日、高円宮家の三女、絢子さまと日本郵船勤務の守谷慧(けい)さん(32)の結婚式が東京・代々木の明治神宮で行われた。
式後、宮内庁職員が婚姻届を提出して絢子さまは皇籍を離れ、高円宮絢子女王殿下から、民間人の「守谷絢子さん」になる。
民間人になるとは?皇族には戸籍がない
皇族は、一般の国民とはいろいろと違いがある。その一つが、戸籍。皇族は戸籍がなく、姓を持たない。絢子さまの「高円宮家」や、「秋篠宮家」「常陸宮家」というのは名字ではなく、天皇陛下から与えられた宮の称号(宮号)だ。
天皇と皇族には、戸籍や住民票がない。
では、生まれてからの記録は、どのように保管しているのか。
天皇や皇族は、民間の戸籍の代わりに、皇室についての家族関係を記録する「皇統譜」がある。皇統譜は、天皇と皇后に関係する「大統譜」と、皇后以外の皇族に関する記録をまとめた「皇族譜」の2つに分かれている。
これらは、皇室典範によって決まっている。
2014年に結婚した千家典子さんは、結婚式の翌日、宮内庁長官が皇籍離脱を登録した。絢子さまも結婚後は、この皇統譜に皇籍から離れる旨を記されることになる。
現在の名字の制度は、古くは5世紀末に始まった「氏姓制度」にさかのぼる。このころ、豪族は血縁関係などをもとに「氏」を組織し、大王(のちの天皇)から政権内の地位を示す「姓(かばね)」を与えられて大和政権の職務を分担した。
姓を授ける側であり、支配者である大王には、氏も姓も必要ない。その後、大王が天皇となり、皇族とは何か、という範囲も決まった。その過程で皇族も姓を持たなくなり、天皇や皇族は支配者であるため戸籍も必要なかったという。
実は医療費も全額負担
天皇や皇族は、他にも民間人と違うところがある。医療保険も加入資格がないので、医療費も10割負担だ。選挙権も被選挙権もないし、海外に出る場合は一往復限定で、その都度パスポートが発行される。
絢子さまは、婚姻届を出すことで戸籍がつくられ、姓を得るほかにも医療保険に加入したり、選挙に参加したり、10年使えるパスポートを作ったりすることができるようになる。