リモート育児と“大家族ごっこ”。超多忙な夫とフリーランスの私が見つけた新生活

私たちは、めまぐるしい毎日の中で「手放さない」暮らし方・働き方を模索しつづけている最中だ。
「大家族ごっこ」でベビー大集合、お風呂での一枚。
「大家族ごっこ」でベビー大集合、お風呂での一枚。
徳瑠里香提供

「子育てをして得たもの、手放したもの」というお題をいただいてこのコラムを書いている。

得たものはやっぱり、命をかけてでも守りたい娘と、一緒に過ごす大変だけれど愛しい日々。

1歳半になる娘の「生まれてはじめて」を目撃しては手を叩いて喜び、シャッターを切って、夫と「世界一かわいいい」「天才か?」と親バカぶりを忌憚なく発揮し合って笑う。

気づけば、カメラロールを埋め尽くす娘の写真と動画を見返してひとりにやにやしている私。実家へ帰った時に母が「(娘)が笑うだけで幸せになるねえ」と何度も言っていたけれど、本当にその通り、家族の中心に娘がいるだけで心がじんわり満たされて「幸せな瞬間」が増える(誰かがそばにいて、時間と心に余裕がある時は特に)。娘が笑ってくれるなら、渾身の変顔も、音痴な歌も披露するよ!

では、その一方で、手放したものは?

子育てをして、仕事をはじめ自分のために使える自由な時間は圧倒的に減った。

心に余裕がなくてイライラすることもあるし、「自分」を失ってしまいそうな寂しさと不安、思い通りにいかないもどかしさと焦りを感じることもある。

「幸せなのに、孤独」「充実しているのに、物足りない」といったように、一見矛盾するような感情が綯い交ぜになって押し寄せ、どっと疲れを感じることもある。

「親である自分」が大変だけれど幸せで充実した日々を得た一方で、「親ではない自分」が心の奥底で寂しさやもどかしさを抱え、「自分」にとって大切なものを手放してしまいそうになる。だからこそ私は、「手放したくない」という意思を持って、必死に踏みとどまっている。

そう、私たちは、めまぐるしい毎日の中で、娘を中心とした家族の時間と自分の仕事(好きなこと)を「手放さない」暮らし方・働き方を模索しつづけている最中だ。

まだその途中にいて、自分たちにできることには限界もあるけれど、"我が家の場合"の経過報告をさせていただけたら。

共働きの核家族、夫は4カ月出張で不在だったことも

ちなみに、我が家は、実家が遠い共働き核家族。夫は会社員だけれど、夜中まで働くことがデフォルト(2時頃帰宅)で出張が多い。娘が1歳になる前後の4カ月ほど出張続きでほとんど家に帰ってこなかった。

私は在宅ワークのフリーランス(取材や打ち合わせで外へ出ることも多い)。復帰前は、子育て優先で時短で自分のペースで働こうと思っていたけれど、やりだせば仕事は面白く、限界まで仕事を引き受けて、ほぼフルタイムに。アクセルを踏み切れていないもどかしさはあるものの、アウトプット量や収入は産前に戻りつつある。

1歳半の娘は生後7カ月から保育園へ通っている。入園して2ヶ月くらいは免疫不足でほとんど登園できなかったが、今はだいぶ菌に強くなった。

「すれ違い」を重ねる私と夫が見つけた、新しいライフスタイル

夜型の夫と朝型の私。

結婚時は、生活スタイルが逆転していて(無理に合わせることもせず)すれ違うことも多かったけれど、子どもが生まれてから私が「超朝型」になったことで、いい具合に重なった。

「朝ごはんを家族みんなで食べること」を軸に暮らす私と夫のスケジュールは以下の通り。

私が娘と一緒に8時頃に寝て、夜中の2時頃に起きるという「超朝型生活」にシフトしたことで、夫が帰宅する頃に夫婦での会話の時間が生まれ、朝の食卓を家族で囲む習慣ができた。もちろん子育ては基本的に予定通りに進まないので、乱れることも多いけれど。

これなら、夫も朝から夜まで気兼ねなく働けるし、私も"真夜中"に自分の時間が持てる。

家事は分担していないけれど、なんとなく私が料理と洗濯、夫が皿洗いと掃除、と得意なこと中心にできる時にできる人がやっている。「やって当たり前」にはしないで、お互いに「●●やったよ」とアピールして「最高!」「さすが!」と褒め合う。

育児は平日は私が娘と関わる時間が多いので、土日は夫が中心にやっている。

「リモート育児」で"ひとりじゃない"と思える環境を

私が仕事復帰して、娘がようやく登園できるようになったと思ったら、夫の仕事がウルトラ忙しくなり約4カ月間出張で不在になったことがある。

そのいわゆる「ワンオペ」期間をどう乗り切ったか?

まず、私は毎日LINEで娘の成長ぶりや家事育児のあれこれを共有し、夫は出張先から「リモート育児」をしていた(この発想は瀧波和賀さんのコラムから得た)。

たとえば、ドライヤーが壊れた時に商品を比較検討しポチッとしたり、娘の運動会で必要な似顔絵を書いて送ったり、娘と私の誕生日プレゼントを届けたり。その行為自体は大した「戦力」にはならないが、「無関心ではない」「離れていても育児に参加する」という姿勢は、大きな心の支えになった。

リモートで育児に参加していたのは夫だけじゃない。愛知と愛媛に暮らすお互いの両親もだ。

娘は母や義母とテレビ電話でよく話をしているので、スマホのことを「ばあば」と呼ぶ。米や味噌、野菜や果物、おやつもダンボールいっぱい頻繁に届くので、生協の宅配と合わせて、ほとんど買い物に行かなくて済むので助かっている。

夫はいない、頼れないものと腹をくくれば、てんやわんや綱渡り状態ではあるけれど、なんとか生活は回っていく。慣れてしまえば、それ自体は苦ではない。

ただ、基本的に家でひとりで仕事をして、言葉が通じない娘とふたりで生活をしていると、「孤独」を感じやすい。だからこそ子育てには、リモートでも、娘の成長を一緒に喜んでくれる人がいて、「ひとりじゃない」と思えることが大事なのだ。

都会で「大家族ごっこ」仲間を増やす

友人たちと「大家族ごっこ」もよくしている。

私は、愛知の片田舎で両親と祖父母と妹ふたりと、隣近所にいとことはとこが暮らすいわゆる「大家族」のような環境で育ってきた。子どもは勝手に遊びまわって、親たちは井戸端会議が"家族の風景"だった。

実家に帰る度に、親と子が1対1で向き合わないでいい環境はいいなあと思うけれど、田舎に戻る気もない。ならば、この場所で...ということで生まれたのが、子育て中の友人たちとお泊まり会をする大家族ごっこ!

子どもたちには遊びまわってもらって、寝静まった後に私たちはワインをあける。1ヶ月に1回くらいのペースで会っていると、友だちの子どもの成長も嬉しくて、もはや私は親戚のおばちゃんです。現在お泊まりしなくても「家族ごっこ」をできる仲間を絶賛増やしているところ。

大家族ごっこ。子どもたちのご飯の時間。このあと大人たちはゆっくり宴
大家族ごっこ。子どもたちのご飯の時間。このあと大人たちはゆっくり宴

社会の中に、家族以外の「居場所」をつくる

生後7カ月で保育園に預け、真っ赤な顔で泣いてしがみつく娘の手を解いて仕事へ向かった日。チクチクと心は痛み、小さな罪悪感が生まれた。

でも、娘は私が思っている以上にたくましく、順応力を発揮して、私たち以外の人たちと関係性を築いていった。あんなに泣いていた保育園も今では、自ら手を伸ばして先生と友だちのもとへ駆け出していく。

私が教えたことのない歌や言葉を披露してくれることもあるし、連絡ノートからは私の知らない一面を垣間見ることもできる。

日々、娘の成長を見守り喜んでくれる大人が身近にいることがこんなにも心強いものかと、先生たちの存在に支えられている。あの時の葛藤は一体なんだったんだろうと思うほど、今は心から保育園に預け(ることができ)てよかったと思う。

だからこそ、希望する人が漏れなく入れるよう制度を整えてほしいと思うし、ずっと子どもと向き合っている専業主婦の人たちを尊敬する。

親と離れて初めて過ごす保育園は、娘にとっては未知の世界で不安だったと思う。でも、そこが"安心できる優しい場所"なのだとわかれば、娘は順応し、自分の"居場所"を見つけていく。子どもは親だけに育てられるわけじゃない。

これから娘が成長するにつれて、私たち親以外の人たちと信頼できる関係性を築いていけたらなら、娘の人生はより豊かになっていくだろう。

娘が社会の中で居場所を見つけられずにつまずくことがあったとしても、夫と一緒に、安心して帰ってこられる家庭を築いていきたと思っている。

私の仕事に娘を連れ出して乗った満員電車で娘が泣き出し、罪悪感と焦りを感じて小さくなっていた時、「元気があっていいね〜」と笑顔であやしてくれたおばちゃんや「ここにいていいんだよ」と呟いてくれたお兄さんのことは今でも忘れない。

その一言で、私と娘にとって、恐怖の満員電車内は「安心できる優しい場所」になった。私もそんなふうに気軽に声をかけられる、"お節介"おばちゃんになりたいと思う。

育児も家事も仕事も全部やるなんて、絶対に無理。どんなに工夫と努力を重ねても、"お母さん"や"お父さん"である前に「一人の人間」である親にできることにはやっぱり限界がある。だから、親だけで抱え込まず、その輪を広げて、娘や子どもたちが「安心できる優しい場所」を社会の中につくっていけたら。

親も、子どもも、ひとりの人間。

100人いたら100通りの子育てがあり、正解はありません。

初めての子育てで不安。子どもの教育はどうしよう。

つい眉間にしわを寄せながら、慌ただしく世話してしまう。

そんな声もよく聞こえてきます。

親が安心して子育てできて、子どもの時間を大切にする地域や社会にーー。

ハッシュタグ #子どものじかん で、みなさんの声を聞かせてください。

注目記事