韓国は習近平が語った「中国の夢」に取り込まれてはならない

中国の習近平主席が、北朝鮮より先に韓国を訪問した狙いは何だったのか、訪韓中の発言から鮮明ににじみ出ている。
SEOUL, SOUTH KOREA - JULY 03: Chinese President Xi Jinping attends a joint press conference with South Korean President Park Geun-Hye (not pictured) at the presidential Blue House on July 3, 2014 in Seoul, South Korea. President Xi Jinping is visiting Seoul before Pyongyang during his first trip to Korean Peninsula as Chinese President. (Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)
SEOUL, SOUTH KOREA - JULY 03: Chinese President Xi Jinping attends a joint press conference with South Korean President Park Geun-Hye (not pictured) at the presidential Blue House on July 3, 2014 in Seoul, South Korea. President Xi Jinping is visiting Seoul before Pyongyang during his first trip to Korean Peninsula as Chinese President. (Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)
Chung Sung-Jun via Getty Images

中国の習近平主席が、北朝鮮より先に韓国を訪問した狙いは何だったのか、訪韓中の発言から鮮明ににじみ出ている。彼は多くの専門家が指摘したように、アメリカ・日本と中国の力比べの中で、韓国を日米韓のトライアングル安全保障の構図から引き離そうとしている。彼の訪韓と韓国内で振りまいた愛想は、軍事超大国への願望を示す日本と、日本の再軍拡の背後にあるアメリカの双方に向けられたものだ。

韓国と中国が警戒するにもかかわらず、アメリカが日本政府の集団的自衛権行使の閣議決定を支持したのも、習近平の韓国取り込みの動きを意識している。

習近平は2012年11月に国家主席に就任した直後、共産党政治局常務委員6人を帯同して国立博物館の展示「復興の道」を参観し、いわゆる「チャイナドリーム」について意味深長な発言をした。

「私が思うに、中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も大きな夢だ。この夢には数世代にわたる中国人の宿願が凝縮されている。それは中国と中国国民の長期的な利益であり、すべての中国人共通の期待である」

「復興の道」は、1840年のアヘン戦争以来、中国が屈辱と苦難から立ち上がり、民族復興までの道のりを展示している。いわゆるチャイナドリームは、失われた清朝の領土の復活と解釈できる。

習近平はソウル大学の講演でも「中国の夢」を語った。中国の地蔵菩薩の聖地・九華山で修行に励み客死した新羅の王子・金喬覚(キム・ギョガク)、唐で官職についた崔致遠(チェ・チウォン)、豊臣秀吉の朝鮮出兵(壬辰の乱)時、明が朝鮮を支援したこと、日本の植民地時代に中国で抗日独立運動を繰り広げた金九(キム・グ)...。彼は中国と朝鮮が手を取り合った史実を一つ一つ取り上げながら、韓国人に「中国の夢」に加わるよう促した。丙子胡乱(1636年末に発生した清と朝鮮の戦争)と、朝鮮戦争で中国が北朝鮮を支援して参戦し、韓国による統一の機会を妨げた話をしなかったのは特筆に値する。

チャイナドリームを邪魔するのが、アメリカのアジア重視戦略だ。アメリカが再三否定しているにもかかわらず、中国はオバマ政権のアジア回帰を、中国の封じ込め戦略と単純に解釈する。習近平の訪韓直後、アメリカの同盟国である日本の安倍晋三首相はオーストラリアとニュージーランドに向かい、アメリカが主導する中国包囲網を完成させることでアメリカを支援した。

習近平は機会あるごとに、太平洋は二つの超大国が並び立つほど広いと強調し、太平洋を東西に分けて、西太平洋を中国の配下に置く意思を宣言してきた。彼は5月にも上海でのアジア信頼醸成措置会議(CICA)で「アジアの安全はアジア人が守るべきだ」と主張した。

皮肉にもその主張は1969年、当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンがベトナム戦争の出口戦略として表明した「ニクソン・ドクトリン」と共通する。ニクソンは「アジア防衛の責任はアジア人自身が担うべきだ」と明示したのだ。

中韓の蜜月を警戒する人たちは、今の両国関係を、大きなヘビがウサギに巻き付いているようだと皮肉っている。穏当でない例えだ。しかし、韓国人が1992年の中韓国交樹立以来、最も親密になった中韓関係に有頂天になり、香港、台湾、モンゴル、東・南シナ海を勢力下に収めていた清朝・乾隆帝(在位1736~95)の栄光を取り戻すという習近平の夢に取り込まれてしまったら、南北朝鮮、米韓、日韓関係は、二度と戻れない橋を渡ってしまうだろう。

習近平の訪韓で、経済協力と民間・学生交流はさらに広がる見通しだ。韓国は、習近平がチャイナドリームに取り込もうとする動きを警戒しなければならないが、同時に北東アジアのパワーゲームとは別に、実質的な関係を善悪ではなく、実用的な観点から発展させていかなければならない。

いうまでもなく、南北関係の改善、日韓関係の修復、米韓間の安全保障協力は、中韓関係に劣らず重要だ。中国が韓国にラブコールを送る理由は、そこにアメリカがあり、日本があるからにほかならない。

南北関係が一定水準に修復されれば、南北朝鮮の中国に向けた立場も強化され、北朝鮮の中国依存度も軽減する。韓国の行動次第で、流動的な北東アジア安保の現実は韓国には好機だ。

中国に中華民族中興の夢があるとすれば、安倍政権の日本も戦争できる軍隊を持ち、東アジアのリーダーになるという夢がある。米中対立の中で、中国の夢と日本の夢が東・南シナ海で衝突する。朝鮮半島で両者の衝突を防ぐことは、韓国外交の難しいが切迫した課題だ。習近平が提案したアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、中国の提案だからと賛成してはならず、アメリカが反対するからと拒否してもいけない。どこまでも韓国の国益を最大限に追及して決めなければならない。

韓国はアメリカの野心に乗って中国包囲網に参加してはならず、派手な修辞に包まれた習近平の中華民族の偉大な夢に惑わされてもならない。北東アジアのより大きな勢力図を読む戦略的な視野が要求される。

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