韓国からの観光ブームに沸く長崎県・対馬。いまの光景はこんなことになっている

人口3万2000余りの島に、文化や習慣の違う外国人がたくさん訪れるのだから、「きれいごと」ばかりではないようだ。

長崎県・対馬の北端から、対岸の韓国・釜山までは約50キロしかない。円安ウォン高になったことや、2011年から両岸を結ぶ船の運航会社が3社に増えたこともあって、対馬はいま、韓国からの観光ブームに沸く。2015年は20万人を超えそうだ。

ただ、人口3万2000余りの島に、文化や習慣の違う外国人がたくさん訪れるのだから、「きれいごと」ばかりではないようだ。韓国駐在経験もある朝日新聞GLOBEの神谷毅記者が、対馬の「いま」をのぞいた。

●島内を行き交うバス、バス、バス

釜山からの船が港につくと、韓国の観光客たちは駐車場で待つ観光バスに乗り込み、思い思いの観光コースに繰り出す。行き先は釣り、トレッキング、神社めぐり、買い物など、さまざま。港には免税店もお目見えしている。韓国のガイドによると、交通費や食事などを含む旅行代金(1泊2日)は、平日なら2万5000円、週末なら3万5000円ほど。(写真は対馬市役所提供)

●自分の国を外国から眺める~韓国展望所

「国境の島」をうたう対馬。日本の観光客が、身近な外国である韓国を望むためにつくられたのが、この韓国展望所。いまは韓国の観光客たちでにぎわう。家族4人で初めて外国旅行に来たという釜山の主婦は「たった1時間余りの移動で外国を体験できる。神社は韓国にはないし、本当の和食を味わえる。なんだか不思議な感じです」。

●愛があれば!

増える韓国からの観光客に対応するため、対馬の民宿が募集した韓国人調理師に採用された金成喆(キム・ソンチョル、左)。民宿で働いていた、島育ちの小茂田清香(こもだ・きよか)と出会い、付き合い始めた。「ここ対馬で死ぬまで暮らす」と宣言した後、プロポーズ。2人で居酒屋「ひたかつ」をオープンし、2015年11月22日の「いい夫婦の日」に婚姻届けを出した。

●神社の手水 ハングルで「この水は飲めません」

古来、大陸と結ぶ航路の要であった対馬には神々がまつられ、古神道の源流の一つともいわれている。鳥居が海中に建っている和多都美神社には、韓国からの観光客も多い。ただ、神道式の参拝は外国人にとって難しいようで、お清めをする手水の建物には、ハングルで「この水は飲めません」と書いてあった。

●トイレットペーパーからみる文化ギャップ

「トイレはきれいに使いましょう。紙は便器に入れても詰まりませんよ~」

ある観光施設のトイレで、こんな注意書きを見つけた。韓国では昔、トイレットペーパーの質が悪く、トイレに詰まるのを防ぐために紙を別の容器に捨てるところも多かった。特に年配の人たちにとっては「流さない」ことが習慣になっている。

●かつての外交の最前線

対馬はかつて朝鮮との外交の窓口であり、日韓交流の最前線だった。1703年、対馬の新藩主を祝うために韓国から訪れる途中、海で遭難した通訳官らの「殉難の碑」。韓国の観光客が供えたのか、ソジュ(焼酎)が置いてあった。

●ゴミだってインターナショナル

対馬からは韓国も近いけれど、中国だって近い。海の向こうから韓国のゴミ、中国のゴミが大量に流れ着いている。

1月3日付のGLOBE特集「島国の島々」では、対馬をはじめ、魅力的な日本の島々の「いま」を、写真とともに紹介しています。

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【訂正】2016/01/12 12:00

当初の記事で、「円高ウォン安」としていましたが、正しくは「円安ウォン高」でした。

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