俳優の「のん」さんが主人公の声を演じたアニメーション映画「この世界の片隅に」に、新しい場面を追加した別バージョンのリニューアル版「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が12月、テアトル新宿・ユーロスペースなど全国の劇場で公開されることが決まった。
「この世界の片隅に」は、第二次世界大戦中の広島・呉が舞台。戦時体制の中で毎日を前向きに、朗らかに生きていく主人公・すずさんを描いた。
2016年11月12日の封切り時点で、上映館は63館のみでスタートしたが、「感動した」と絶賛する声がSNSなどの口コミで広がり、上映館は徐々に拡大。公開から600日以上経った今に至るまで、1日たりとも途絶えることなく劇場での上映を続けている。
こうした反響を受けて、今回の新作公開に至った。片渕須直監督は、原作にはまだまだ魅力的なエピソードがあり、それを描き足すことによって主人公のすずさんだけではない「さらにいくつもの人生」を描き出したいと考えたという。
現行の「この世界の片隅に」に、新たに約30分の新規シーンが追加されて、12月に劇場公開されることが決まった。
前作に引き続き、主人公を演じるのはのんさん。音楽も前回に引き続き、シンガーソングライターのコトリンゴが担当し、主題歌を含む全ての劇中歌を手がける。
追加されるシーンは昭和19年秋と昭和20年冬から春にかけてのエピソードで、主人公のすずさんが、嫁ぎ先の町で出逢った同世代の女性・リンさんとの交流。さらにすずさんが妹・すみちゃんを案じて過ごす中で迎える、20年9月の枕崎台風の場面などだ。
世界観はそのままに、新しい登場人物やこれまでの登場人物の別の側面なども描かれるということで、ファンにはたまらない内容になりそうだ。
タイトルの「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は、片渕須直監督のアイデアを原作者・こうの史代さんが快諾したものだという。
リニューアル版の発表に合わせて、片渕須直監督が発表したコメントは以下の通り。
戦争しおってもセミは鳴く。ちょうちょも飛ぶ。そして、人には人生がある。
それが戦争中であっても。明るくぼーっとした人のように見えるすずさんが自分以外の「世界の片隅」と巡り合うとき、すずさんの中にはどんな変化が生まれるのでしょうか。
すずさんの中にあったほんとうのものを見つけてください。
とどまるところを知らない「この世界の片隅に」旋風
2016年11月の公開以来、「この世界の片隅に」の人気は止まるところを知らない。
同年度のキネマ旬報ベストテンでは『となりのトトロ』以来アニメでは2回目となる日本映画第1位、またアニメ監督としては初となる監督賞を受賞、さらに、同年度の日本アカデミー賞にて最優秀アニメーション作品賞受賞など、数々の受賞暦を誇る。世界34カ国でも劇場公開され、海外でも高い評価を獲得している。
公開から1年半以上経った今でも根強い人気が続いており、8月15日の終戦記念日には新宿・ピカデリーでの上映会が開かれる予定だ。