衆院選で自民党が大勝したことを受け、政府・自民党は10月27日、衆院での与野党の質問時間の配分を見直す方向で調整に入った。野党の質問時間を削減する一方、与党の質問時間を増やす方針だという。共同通信などが報じた。
朝日新聞デジタルは28日、自民党の萩生田光一・幹事長代行の話として、安倍晋三首相(党総裁)が「これだけの民意を頂いた。我々(自民党)の発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこう」と、配分見直しに取り組むよう指示したと伝えた。
安倍首相の指示には、石崎徹衆院議員ら自民党の当選3期の議員有志が27日、与党の持ち時間の拡大を森山裕・党国対委員長に要望したことが背景にある。
石崎氏は自身のブログの中で、「この4年11か月の間、自公合わせた与党議員・野党議員の『数』の比率は、『65:35』であった」とし、「野党議員に質問時間が過剰配分されていた」と、与党の質問時間の拡大を訴えた理由を主張している。
■与野党の質問時間、なぜ野党に多く配分?
議席占有率では与党よりも少ない野党に、なぜ質問時間が多く配分されるのか。これには、議会で多数を占める政党が政府を構成する「議院内閣制」の仕組みと密接な関係がある。
国会制度を定めた「国会法」には、与野党の質問時間に関する配分規定はない。時間配分は与野党が協議し、決めている。
近年、衆院の予算委員会などでは質問時間の7〜8割を野党に配分することが慣例となっている。
そもそも与党は、予算案や法案を国会提出前の段階から政府から説明を受け、審査するなどして了承。政府と一体となって政策をすすめる立場だ。
一方、野党は行政の監視機能を担っている。こうした役割に配慮して、質問時間は野党に多く配分されてきた。
時事ドットコムによると、「麻生政権時代は与党4割、野党6割だったが、旧民主党が与党時代に野党分を手厚くして与党2割、野党8割となり、第2次安倍政権以降も定着していた」という。
朝日新聞7月15日朝刊は「首相入りの予算委集中審議で与党が野党と同等の質問時間を確保した事例は、1995年6月までさかのぼらないと確認できない」と伝えている。
■立憲民主党の長妻代表代行「姑息な試み」
政府・自民党の動きについて、立憲民主党の長妻昭代表代行は28日、自身のTwitterで「自民党が野党時代、強力に要請をして今の配分比となった」「姑息な試みは止めて総理の言う丁寧な説明に努めてもらいたい」と非難した。
■「魔の3回生」イメージの払拭? 疑惑の追及避ける思惑?
質問時間の拡大を申し入れた石崎徹衆院議員ら、自民党の当選3期の衆院議員は、不祥事や失言が相次いだことから「魔の3回生」と呼ばれている。
時事ドットコムは「石崎氏らの申し入れには、こうした負のイメージを払拭(ふっしょく)し、国会で活躍の場を確保したいとの狙いがある」と分析している。
予算委員会はテレビで中継されるなど、野党にとっては「最大の見せ場」とされる。共同通信は「野党側が、森友、加計学園問題を踏まえて追及を避ける思惑だと反発するのは必至だ」と指摘している。
特別国会は11月1日に召集される予定。NHKニュースによると、与党側は会期を11月8日までの8日間とすることを求めているが、野党側は安倍首相の所信表明演説、各党の代表質問、予算委員会での質疑などの実施も求めており、調整が続いている。
共同通信によると、自民党内では野党側の求めに応じて会期を延長する一方、質問時間の割り当ての見直しを提示する案が出ているという。