山口県防府市で5月26日、男児(4)がマンション12階から転落し、死亡する事故があった。
幼い子どもが窓やベランダから落ちて死亡する事故は各地で相次いでおり、ハフポスト日本版が新聞のデータベースを調べたところ、最近でもほかに4件あった。
東京都内だけでも、5年間で少なくとも70人の子どもが転落し、救急搬送されているというデータもある。
子どもの命を守るため、何に気をつけるべきなのか。行政が公開している実験映像とともに確認する。
「12階から男の子が落ちた」と119番
窓を開けて転落?ベランダにイスを…
東京では少なくとも70人が搬送
東京消防庁管内では、2018年から22年までの5年間で、5歳以下の子ども70人が住宅の窓やベランダから落ち、救急搬送されている。
年齢別では、1歳児が19人、3、4歳児がそれぞれ16人ずつで多かった。また、搬送者が多かった月は、5月(21人)と10月(10人)だった。
窓を開ける機会が増える春と秋に事故が多いということだ。
また、消費者庁が厚生労働省の「人口動態調査」をもとに調べてみると、建物から転落して死亡した9歳以下の子どもは、16〜20年までの5年間で21件に上った。
転落した場所別にみると、ベランダが8件と最も多く、窓が4件だった。
「網戸ごと3メートル下に」「ベランダ柵の隙間から」
消費者庁には過去、次のような事故情報が医療機関から寄せられている。
「3歳の子どもが自宅3階から地面に落下した。ベランダに通じる窓が開いており、柵の近くには植木鉢など踏み台になるものが置かれていた。窓の鍵はかけていなかった」
「2歳の子どもがベランダの柵の隙間から3メートル下に転落した。柵の隙間は15センチで、ネットは張っていなかった」
「5歳の子どもが2階の窓枠に腰をかけ、網戸にもたれかかったところ、網戸が外れてウッドデッキ上に落下した」
「4歳の子どもが自宅2階の出窓にのぼって遊んでいたところ、外のウッドデッキ上に転落した。カーテンがかかっていたため、出窓が開いていることに気づかなかったとみられる」
幼児は“数秒”で乗り越える
東京都は2023年4月、子どもがベランダの柵をいとも簡単に越えてしまう危険性を伝える実験動画を公開した。
一般的なベランダの手すりの高さである110センチを子どもが登れるかどうかを試したものだ。
その結果、2、4、6歳は数秒で高さ110センチを乗り越えることができた。
具体的には、4歳は7割近く、6歳はほぼ全ての子どもがそれぞれ登ることができた。2歳も足がかりを利用して登ることができた子どもがいた。
実験映像を見てみても、特に4、6歳はスイスイと110センチの高さを乗り越えていく。2歳も足がかりを利用していとも簡単に登っており、ベランダに植木鉢やイスなどを置くことがいかに危険かわかった。
悲しい事故を防ぐため、政府広報オンラインでは、次のことに注意をするように呼びかけている。
- 窓や網戸には子どもの手の届かないところに補助錠をつける
- ベランダに物を置かない。エアコンの室外機は手すりから60センチ以上離しておく
- 足場となるソファやベッドなどを窓の近い場所に置かない
- 窓や網戸、ベランダの手すりに劣化がないか定期的に点検する
- 不安になって外の様子を見ることがあるため、少しの間でも子どもだけを家に残して外出しない
- ベランダで子どもを遊ばせない
- 窓枠や出窓に座って遊んだり、窓や網戸に寄りかかったりさせない
事故の多くは子どもを残して外出したり、子どもだけで遊ばせたりしている時に起きている。見守りと合わせ、日頃から事故が起きない環境をつくっておくことが重要だ。