『きのう何食べた?』春ドラマ最高の満足度を記録。視聴者層は35歳~49歳の女性が最多、何が響いた?

満足度が右肩上がりで上昇、特に「キャスト演技」「内容」に高い支持
『きのう何食べた?』公式サイトより
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西島&内野主演『きのう何食べた?』春ドラマ最高の満足度を記録、F2層から高い支持

 西島秀俊内野聖陽がW主演する、テレビ東京系のドラマ24『きのう何食べた?』(毎週金曜24:12~)が好調だ。視聴率は深夜帯としては高水準となる3%台をマーク。同局が展開する無料動画配信サービス「ネットもテレ東」の見逃し配信では、第1話が155万回再生とテレ東として過去最高の再生数を記録し、以降も100万回以上の再生数をキープし続けている。オリコンの週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が視聴者を対象に毎週実施するドラマ満足度調査「ドラマバリュー」でも、19年4月クール作品において現時点で最高の満足度(100Pt満点中94Pt)を獲得している。どんな点が支持されているのか?ドラマバリューのデータから紐解いていく。

◆満足度が右肩上がりで上昇、特に「キャスト演技」「内容」に高い支持

 同作は『西洋骨董洋菓子店』(新書館)や『大奥』(白泉社)などを手がけてきた、よしながふみ氏の同名コミックスを原作に、2LDKの部屋で2人暮らしをする男性カップルの筧史朗(シロさん/西島秀俊)と矢吹賢二(ケンジ/内野聖陽)のほろ苦くも温かい毎日、そして月2万5000円の中でやりくりされる日々の食卓を描いた物語。人気の高い原作の実写化に加え、深夜ながらビッグネームの2人が主演を務めるとあって、ドラマ化発表当初から注目を浴びていたが、いざ放送が始まると原作の世界観をより引き立てる実写化のクオリティの高さ、心の機微を丁寧に描いた脚本、主演2人の好演が支持され、さらに大きな話題となっている。劇中内の素朴ながら愛情に溢れた料理の数々も注目され、『公式ガイド&レシピ きのう何食べた?~シロさんの簡単レシピ~』(講談社/4月25日発売)も人気を集めている。

 ドラマバリューでも、100Pt満点中初回86Ptと1話目から高い満足度を記録。天海祐希主演の人気シリーズドラマ『緊急取調室』(テレビ朝日系)の初回89Ptに肉薄し、19年4月クールの初回満足度ランキング2位をマークした。その後も、2話で93Pt、3話、4話、5話はそろって94Ptを獲得するなど、満足度は右肩上がりで推移を続けている。

 ドラマバリューは「視聴量」、「主演」、「その他キャスト」、「内容」、Twitterのツイート数から集計する「話題性」の全5項目によって構成されているが(各20Pt満点)、その中でも各話で高い数字を記録しているのが、作品の根幹となる「主演」、「その他キャスト」、「内容」の3項目。最新調査の5話では、この3項目が初めてそろって20Pt満点を獲得した。5話はシロさんが年末年始の帰省を通して、両親の“老い”、孫の顔は見られないといった今後への“覚悟”を再認識し、またケンジとの関係や将来について見つめ直す様子が描かれた。

 視聴者からは、「原作の中でも一番好きなストーリーの回だったので、ドラマではどうなるかと少し心配もあったがとても良い展開で面白かった」(40代女性/東京)、「両親とのやり取りがリアルで、私自身もいろいろなことを考えさせられた」(20代女性/東京)、「ふとしたおかしみや感動があって、家族やパートナーの大切さに触れることが出来る良いストーリーだった」(20代女性/東京)、「主人公の中年男性の人生におけるさまざまな問題がリアルに伝わってきた」(30代男性/千葉)、「主演の西島さん内野さんをはじめキャストの方々の温かみのある演技が、時にシビアな物語を絶妙に包み込んでくれていると思う。素敵な物語だ!」(30代女性/東京)などのコメントが寄せられている。

◆妻・母・娘… F2層だからこそ、さまざまな視点で楽しめる

 なお、ドラマバリューのデータから視聴者層を見ると、最も多いのはF2層(35歳~49歳の女性)で平均35.2%。これまでの調査では、テレ東の「ドラマ24」枠の作品のF2層の視聴はいつも大体平均20%前後(19年1月期『フルーツ宅配便』:20.2%、18年10月期『忘却のサチコ』:19.3%、18年7月期『GIVER 復讐の贈与者』:20.6%、18年4月期『孤独のグルメSeason7』:19.1%)なので、平均15%ほど伸びていることになる。ちなみに、おっさん同士のピュアな恋愛模様を描き大きな話題を集めた18年4月期のドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)のF2層の視聴は、平均25.9%だった。同じLGBTQを扱った作品でも、『きのう何食べた?』がよりF2層の心を掴んでいる様子が見て取れた。

 ではなぜ、特にこの層に響いているのだろうか。現在のF2層は、「団塊ジュニア」と「就職氷河期世代」からなる女性たち。一般的には、結婚、出産、子育てといった家族形成期で、妻、嫁、子どもの母、(両親の)娘とさまざまな「顔」を併せ持つ時期でもある。そして現代では、「結婚しない」という選択肢も増え、社会人としてバリバリ働き続ける女性も多いはずだ。そういった、さまざまな顔を持っている女性たちは、『きのう何食べた?』をよりいろいろな角度・視点で観ることができ、各キャラクターに感情移入しながら楽しむことができているのではないだろうか。この層が視聴することは、LGBTQへの理解を深め、多様性のある社会をめざしていくうえでも意義があることのように思う。加えて「料理」という要素が入っているのも、F2層の心を掴むポイントと言えるだろう。

 物語はこれから後半戦へ。5月17日の第7話では、シロさんの友だちカップルの小日向大策(山本耕史)と井上航(磯村勇斗)も本格的に物語に絡んでくる。男性カップルの何気ない日常を紡いだ物語は、この先も日々に何気ない気付きを与えてくれそうだ。

●オリコン ドラマバリューとは
オリコングループの調査システム「オリコン・モニターリサーチ」の登録者から毎週、全国690名の視聴者を対象に、各ドラマの「期待度」「満足度」について、「作品」「主演」「主演以外」「セリフ」「映像」「音楽」「美術」「ストーリー展開」を10点満点で調査。「オリコンドラマバリュー」はその結果を、過去1年間のデータに照らして偏差値化した。「視聴量」「主演」「主演以外」「内容」という4項目に加え、Twitterのツイート量を加えた「話題性」の5項目を各1~20ポイントとし、計100ポイント満点で集計している。

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