ウクライナ南部へルソン州にあるカホフカ水力発電所の巨大ダムが、現地時間6月6日未明に決壊したことで、州都ヘルソン市などドニプロ川両岸の広い地域で大規模な洪水が発生している。詳しい被害状況は明らかになっていないが、洪水被害の危険にさらされているのは約4万2000人に上るとウクライナ政府当局が発表した。
ロシア軍によるウクライナ全土侵攻の中で起きた今回のダム決壊。ウクライナ政府は「ロシアによる爆破」、ロシア政府は「ウクライナによる破壊行為」と国連安保理の緊急会合で主張して、お互いを非難する事態となっている。
■ウクライナ支配地域のドニプロ川西岸だけで1000軒以上が浸水
英紙ガーディアンはウクライナ当局者の予測として、今回のダム決壊でドニプロ川の両岸で約4万2000人が洪水被害の危険にさらされており、洪水は7日にピークに達すると予想されていると報じた。国連緊急援助責任者のマーティン・グリフィス氏は「大惨事の規模は、今後数日で完全に認識されるようになるでしょう」と述べたという。
現地メディア「キーウ・インディペンデント」によると、ウクライナ政府が任命したヘルソン州軍政当局トップ、オレクサンドル・プロクジン氏は6日午後7時半に、「この時点で、右岸(ウクライナ統治下にあるドニプロ川西岸)に約1335軒の家が水中にあることがわかっています」とSNSに投稿した。午後1時までに約3686人がこの地域から避難したという。
一方、ロシアの支配下にあるドニプロ川東岸地域でも被害が出ている。ロシア国営タス通信は、東岸のノバカホフカ市では水位が12メートル以上に上昇したほか、14の集落が浸水し、最大80の集落が浸水する危険があると報じた。「人々は近隣の集落から避難していますが、地方自治体によると、大規模な避難は必要ありません」と続けている。