2022年の中間選挙を経て、新しくスタートしたばかりのアメリカ連邦議会下院が、13回投票を実施しても議長が決まらないという混乱に陥っている。
下院議長を選ぶ投票は1月3日に始まったが、初回で共和党のケヴィン・マッカーシー議員が過半数を獲得できなかったため、再投票になった。
1回の投票で議長が決まらないのは、1923年以来100年ぶりの事態だったが、マッカーシー議員はその後も過半数獲得に失敗。1月6日に行われた13回目の投票でも議長に選ばれなかった。
この投票の後、下院は午後10時(現地時間)まで休会し、その後14回目の投票を実施する予定だ。
議長が決まらない限り、議員の就任宣誓や法案採決、委員会の調査など通常の業務が行えないため、現在下院は機能不全状態になっている。
なぜこれほど投票を重ねても、議長が決まらないのか。
なぜ、これほどまでに決まらないのか
マッカーシー議員が選ばれ続けない理由は、同氏に強硬に反対する共和党の議員20人が、党の意向に反して別の候補に投票しているからだ。
11月の中間選挙で多数派となった共和党は、選挙後にマッカーシー氏を下院の議長候補に選んだ。大抵の場合、ここで選ばれた候補がそのまま議長になる。
しかし、中間選挙では下院435議席のうち、共和党が222、民主党が213議席を獲得。共和党は多数派になったものの、その差はわずかだ。
議長に選ばれるためには過半数の218票を獲得する必要があるが、20人が頑なにマッカーシー氏の支持を拒んでいるため、218票を集められないのだ。
なぜ、20人は反対するのか
マッカーシー氏の議長選出に反対している20人は、トランプ前大統領と近い関係にある強硬右派の議員で、ニューヨークタイムズによると、このうち19人が超保守派議員連盟「フリーダムコーカス」のメンバーだ。
さらに、20人のうち12人が「2020年の大統領選は不正行為があった」とするトランプ前大統領の根拠なき主張を支持している。また、17人が2022年の中間選挙でトランプ氏の支持を受けた。
この20人が、マッカーシー氏を選ばない理由の一つは、民主党のバイデン大統領への対立姿勢が「不十分」だと考えているからだ。
また、アメリカでは12月に、国防予算やウクライナ支援、学生や労働者の援助を含む約1.7兆ドルの歳出法案が成立したが、反マッカーシー派はこうした政府の巨額財政支出にも反対。
今の政治のあり方に満足せず、極右のやり方で政治を進めたい彼らにとって、マッカーシー氏は邪魔とも言える存在であり、一部議員は「現状を壊したい」と訴える。
一方で、トランプ前大統領はマッカーシー氏を支持。4日には 「共和党員たちよ、素晴らしい勝利を恥ずべき敗北に変えてはいけない」「ケヴィン・マッカーシーは良い仕事をするだろう。素晴らしいものになるかもしれない」と、自身が立ち上げたSNSでマッカーシー氏への投票を呼びかけた。
造反している20人は、共和党のバイロン・ドナルズ議員などに投票しているが、5日にはドナルド・トランプ前大統領を選んだ議員もいた。
さらに4回目の投票では、20人とは別の共和党議員1人が棄権票を投じたため、マッカーシー氏の獲得票数は最初の投票よりも減った。
ただし、1月6日に行われた12回目と13回目の投票では、マッカーシー氏の得票数はそれぞれ213票と214票と過半数に近づいた。
一方、少数派になった民主党は、すべての議員が民主党院内総務であるハキーム・ジェフリーズ氏に投票している。