アメリカ連邦最高裁判所の歴史上初めて、黒人女性の判事が誕生する。
アメリカ連邦上院議員は4月7日、バイデン大統領が最高裁判事に指名したケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏を、53対47の賛成多数で承認した。
人工妊娠中絶や銃規制など、賛否がわかれる社会問題の最終的裁決の場である連邦最高裁判所。
黒人女性が最高裁判事になるのは初めてで、さらにジャクソン氏の就任で女性判事の数が9人中4人と最多になる。また、元公選弁護人というジャクソン氏の経歴も注目を集めている。
大統領、喜びの瞬間をツイート
連邦最高裁の判事は、大統領が指名した候補者を上院が承認する。
バイデン大統領は2020年の大統領選で、自分が大統領に選ばれかつ任期中に最高裁判事の空きが出た場合は、黒人女性を指名すると約束していた。
その公約通り、バイデン大統領は2022年1月に引退を表明したスティーブン・ブライヤー判事の後任に、ジャクソン氏を指名した。
上院は現在、民主党と共和党の議席数が50と同数だが、4月7日の投票では3人の共和党議員がジャクソン氏指名を支持し、賛成53、反対47で承認された。
投票の行方を、ホワイトハウスで見守ったバイデン大統領とジャクソン氏。
採決は、初の黒人そして女性の副大統領であるカマラ・ハリス氏によってとりおこなわれ、バイデン氏は承認された喜びの瞬間をツイートした。
さらに、バイデン氏はジャクソン判事の承認を「私たちの国にとって歴史的な瞬間だ」と歓迎。
「最高裁は、アメリカの多様性を反映する方向に向かってさらに前進しました。彼女は素晴らしい判事になるでしょう。この瞬間を彼女と共有できて光栄です」とコメントしている。
ジャクソン氏、どんな人?
ジャクソン氏は、ワシントンD.C.で生まれ、南部のフロリダ州マイアミで育った。
人種分離された小学校に通っていた両親は、歴史的黒人大学に進んだ後に公立学校の教師となった。
ジャクソン氏が幼い頃に父親がロースクールで学ぶようになり、ジャクソン氏は学校の課題に取り組む父を見ながら育ったという。
ジャクソン氏自身は、優秀な成績で高校を卒業した後に「目標が高すぎる」という進路指導教員の言葉をはねのけて、ハーバード大学に進学。
ハーバードロースクールで学位を取得した後に、3人の連邦裁判所判事の書記官として経験を積んだ。その中には、今回引退を表明したブライヤー最高裁判事も含まれている。
さらに2013年から8年間コロンビア特別区連邦地方裁判所の判事を務め、2021年6月には、コロンビア特別区の巡回控訴裁判所判事に任命された。
初の黒人女性最高裁判事
1789年に設立され、230年以上の歴史があるアメリカ連邦最高裁判所では、これまで115人が判事を務めてきたが、そのうち108人と圧倒的大多数が白人男性だ。
黒人判事はサーグッド・マーシャル氏と クラレンス・トーマス氏の2人だが、いずれも男性だった。
ジャクソン氏は黒人として3人目、そして女性としては6人目の最高裁判事となる。
ちなみに、これまでに最高裁判事を務めた女性はサンドラ・デイ・オコナー氏、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏、ソニア・ソトマイヨール氏、エレナ・ケイガン氏、エイミー・コーニー・バレット氏の5人。
このうち、ソトマイヨール氏(初のヒスパニック系判事)とケイガン氏、バレット氏は現役判事で、ジャクソン氏が就任すれば、9人の最高裁判事のうち4人が女性となる。この女性が占める人数も、最高裁の歴史上最多となる。
また、51歳のジャクソン氏はバレット氏に次いで2番目に若い最高裁判事になる。
現在、アメリカの最高裁判所は保守派の立場をとる判事が6人でリベラル派3人と、保守派が多数を占めている。退任するブライヤー判事はリベラル派なので、ジャクソン氏就任後もこの比率は変わらないものの、リベラル派の全員が女性判事になる。