ロシアが一方的に「併合」したウクライナ南部とロシアを結ぶクリミア大橋で10月8日、大きな爆発が起きた。道路の車線の一つが海に崩落した。
ロシア国営タス通信は「橋でトラックが爆発し、列車の燃料タンク数個に引火。3人が死亡。自動車と鉄道は通行止めになった。ロシア政府は事故調査委員会を立ち上げた」とした。
9日までに乗用車はもう一つの車線で通行可能になったが、トラックは利用できない。また、鉄道も復活したが遅れが生じているという。
ウクライナ政府の公式発表はないが、同国内では「ウクライナ治安機関の特殊作戦」と複数のメディアが報じている。
■「クリミア併合」の象徴として建設。プーチン大統領がトラックを運転したことも
クリミア大橋は、ロシアが2014年に一方的に「併合」したクリミア半島とロシア本土を結ぶ唯一の橋。BBCによると、全長19キロとヨーロッパ最長で、自動車と列車が通行できる。ロシアによる「クリミア併合」の象徴となっており、2018年の道路開通時には、プーチン大統領が自らトラックを運転して橋を渡るパフォーマンスを見せていた。
2022年2月から始まったウクライナ侵攻では、南部のロシア軍に物資を運ぶ補給路として使われている。ウクライナ政府はクリミア大橋を「ロシアによる違法建築」としており、大統領府の顧問を務めるアレストビッチ氏は7月16日、「技術的に可能となれば攻撃対象となる」と発言していた。
■ウクライナ保安庁の作戦か?現地メディアが報道。思わせぶりな投稿も
インタファクス・ウクライナ通信は10月8日、「橋の爆発はウクライナ保安庁(SBU)による特別な作戦だった」と情報筋が語っていると報じた。
またウクライナ通信も、政治学者のオレクシイ・ホロブツキー氏がSNSで以下のように述べているという記事を掲載している。
「クリミア橋の爆破は、ウクライナ治安機関の特殊作戦です。これは、法執行機関の私の情報源によって確認されました。詳細はまだ明らかにされていません。特殊作戦自体は、長い間、慎重に準備されていました」
ウクライナ政府は公式声明を出していない。
ただし、関与が指摘されているウクライナ保安庁は、爆発で崩落したクリミア大橋の写真とともに「橋は夜明けに美しく燃えています。ナイチンゲールがクリミアでSBUと会っている」と、Twitterに思わせぶりな投稿をしている。