「ジャニー喜多川の性加害はあったと認識している」
9月7日に開かれた記者会見で、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子氏が事実関係を認めた。
藤島氏が公の場に姿を現すのは初めて。9月5日付で社長を退任し、新社長に所属タレントの東山紀之さんが就任したことも明らかになった。
記者会見には大勢のマスコミも出席し、NHKや民放4社は番組で生中継するなど大々的に報道した。
一方、質疑応答では、外部専門家チームの調査報告書に記載された「マスメディアの沈黙」に関連する質問は、テレビの記者から出なかった。
正面から質問したのは、ジャーナリストと新聞記者だった。
記者会見を振り返る
記者会見には、藤島ジュリー景子氏、所属タレントの東山紀之さん、井ノ原快彦さんが出席した。
冒頭、藤島氏が「ジャニーズ事務所としても、個人としても、ジャニー喜多川に性加害はあったと認識している」と発言。
新社長に就任した東山さんは、「喜多川氏の性加害を認め、謝罪する」とし、「今後は人生をかけてこの問題に取り組むため、年内をもって表舞台から引退します」と表明した。
その後、質疑応答に移り、記者からは被害者への補償や救済、再発防止策などの質問が次々出た。
報告書では「マスメディアの沈黙」に言及
一方、外部の専門家チームが8月29日に発表した調査報告書では、性加害の背景として「マスメディアの沈黙」についても言及している。
ここでは、過去に週刊誌が喜多川氏の性加害を取り上げてきた一方、元ジャニーズJr.が被害申告に関する記者会見を行うまで、多くのマスコミが正面から取り上げてこなかったと指摘。
その理由は、「ジャニー氏の性加害を報道すると、ジャニーズ事務所のタレントをテレビ番組に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるからではないかといった危惧から、報道を控えていた状況があったのでは」としている。
また、「メディアから批判を受けることがないことから自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していった」とも記載した。
これをみると、「マスメディアの沈黙」は重要な項目のように思える。
しかし、マスメディアの沈黙に関連した正面からの質問は、大勢のジャニーズタレントが日々番組に出演しているテレビの記者からは出なかった。
「忖度は皆さんの問題でもある」
「マスメディアの沈黙」について、正面から質問したのはジャーナリストの松谷創一郎さんと、朝日新聞の記者ら。
松谷さんはまず、「『メディアの沈黙』の根源に、ジャニーズ事務所の『メディアコントロール』があった」とし、テレビ朝日の音楽番組にジャニーズ事務所と競合するグループが出演しにくい状況が続いていると指摘。
これは、過去にジャニーズ事務所がかけたプレッシャーに起因し、こうした構造が結果として喜多川氏による性加害という事態を招いたと述べ、「テレビ局が共犯というのはまさにこういう点にある」と発言した。
その上で、「こうした忖度はまだ続いたほうがいいのか。もし続ける必要がないのであれば、競合グループが音楽番組などのテレビに出演できることや、活動を妨害しないことなどを明言していただけないか」と質問した。
この質問に対し、東山さんは「もちろんです」、「忖度は必要ないと思っています」と短く回答。
一方、井ノ原さんはこのように話した。
「こういう立場になって、これはなんでこうなんだろうと疑問に思うこともあって、『なんでこうなの?』と聞いたら、『昔、ジャニーさんがこう言ったから」と言うんです。ちょっと昔のタイプのスタッフがいたのも事実」
「『忖度をなくします』と言っても、急になくなるものではない。忖度って日本に蔓延しているから、これを無くすのは本当に大変。皆さんの問題でもあるので、一緒に考えていく問題。その辺りはご協力いただきたい」
「指示したことは一切ない」
朝日新聞の記者は、藤島氏がメディアコントロールに関わっていたのではないかと質問。
藤島氏は「指示したことは一切ございません」と答えた。
なぜジャニーズ事務所が番組で男性アイドル枠を独占できるのか、といった質問には、東山さんは「やはりタレントの努力なんじゃないですかね」と語った。
一方、藤島氏は「昔は男性アイドルが少なかったので、私どもが昔からやっていたというのが大きいかもしれない。ただ、今はたくさんの男性アイドルがいて、共演もしているので、私は(メディアコントロールを)認識をしていません」と話した。
その上で、「見聞きしたわけではないが、以前そういうことがあったのかもしれない。あった、というのは疑惑を知っているという程度で、『メリー(元社長)が誰々を出すな』と言ったというのは聞いたことはない」とした。
ジャニーズ事務所の記者会見は午後2時から始まり、午後6時10分頃まで続いた。
◆性暴力について相談できる窓口
ワンストップセンター、性犯罪・性暴力に関する相談窓口の全国共通短縮番号
#8891
警察庁の性犯罪被害相談電話全国共通番号
#8103
内閣府「性暴力に関するSNS相談支援促進調査研究事業」 Curetime
時間:24時間365日
方法:17〜21時は待機している相談員がチャットで対応。それ以外の時間はメールで相談可能。外国語での相談も受け付けている。
相談機関では性暴力専門の相談員が対応している。状況や本人の意思を踏まえて対応を考える。相談員が本人とともに警察へ行く場合もある。
◆衣服と身体を洗わない
性被害にあった証拠を採取するために、重要となるポイントがある。
1. 被害に遭った時の衣服を洗わない
2. 身体を洗わない
薬物の使用が疑われる場合は、尿検査や血液検査をする必要がある。
なるべく早く警察やワンストップセンターに相談することが大切だ。