「女性が、どんどん主役になる」というスローガンを掲げながら、男性経営者だけがずらりと並ぶ。
「かながわ女性の活躍応援団」の公式サイトに違和感を覚えるという声がTwitterであがっている。
公式サイトによると、この応援団は「女性が個性と能力を発揮できる社会の実現に向けて、社会全体で女性の活躍を応援する機運を高めていく」ことを目的にしているという。黒岩祐治・神奈川県知事が団長となり、取り組みに賛同する日産自動車、資生堂、アサヒビールなどをの企業の代表が応援団員として名を連ねる。
女性の活躍を応援する「応援団」の中に女性が1人もいないのは、どうしてだろうか。
ハフポスト日本版は神奈川県の男女共同参画センターに取り組みの真意を聞いた。
——女性活躍をうたいながら、なぜ応援団員が全員男性なのですか。
「現状、日本全体でも神奈川県でも企業の管理職の9割以上が男性です。
この応援団は、女性が働きやすい会社になっていくためにはトップの意識改革が必須であるという前提で設立していますが、男性トップの方に響かせるには、男性トップから伝えることで意識改革を促すというが最も有効な手段だと考えました」
——「男女」のトップから男性トップへ、とは考えませんでしたか。
「普段この応援団の活動以外にも、男女共同参画センターで様々な施策を講じている中で得てきた経験を元に内部で検討し、中小企業含む経営者に働きかけるには、現在大多数である男性の経営者から広めていく方が効き目があるだろういう結論に至りました」
■2年前にも物議
実はこのサイトは、2015年11月に開設した際にも「女性がいない」ことに対する疑問の声があがっていた。
——立ち上げ当初から批判的な声もありましたが...。
「男性のみが並んでいるポスターに対する批判的な声もたくさんありましたが、応援団長である黒岩知事は『まず知っていただくことがこの活動を意義あるものにしていくための一歩』と捉えておりますので、ご指摘はありながらも、プラスに受けて止めておりました」
——当事者である、働く女性や働きたい女性に不快感を与えるとは思いませんでしたか。
「この事業自体は、大企業・中小企業のトップの方に向けて実施しているものではございますが、ご指摘のように、ホームページやパンフレットをご覧になった女性の方が、パッと目に飛び込んでくるポスターなどの視覚情報で色々な反応をされた面もあるかと思います」
「ただ施策の根本の狙いは女性活躍を目指すものですので、丁寧に説明できれば、最終目標は同じだとご理解いただけると考えていますし、そういったことを伝えていくための市民向けの講座も実施しています」
■2倍に増えたけど......
応援団員の数は、2016年9月に2倍の20人になった(団長の県知事と合計で21人)。しかし、それでも女性経営者の姿はない。
——今後も、コンセプトや応援団の団員構成は変えるつもりはありませんか。
「現状ございません。この施策の目的を達成するためには、このコンセプトが今もっとも適していると考えております」
——2年間の活動で、どんな成果があがっていますか。
「主な成果として2点あります。
1点目は、応援団員として参加いただいている企業の中での実績です。
各社に「行動宣言」という形でそれぞれ「〇〇年までに女性管理職比率を〇人にする」などといった具体的な目標を表明していただいているのですが、11月7日に意見交換会で進捗報告をしていただいたところ、各社目標を達成したり、近づいたりされていました。この変革が、次の啓蒙につながると考えています」
「もう1点は、設立当初から実施している女性活躍における取り組みや知見を共有するための啓発講座への参加者の広がりです。
昨年度の参加者は合計530名でしたが、今年度は1500人の参加を見込んでおります。
また、昨年度までは県内の市町村との取り組みがほとんどでしたが、29年度は経済団体、企業と連携したり高校生向けの講座を開いたりと、参加者の幅を広げています」
■女性向けのメッセージは?
——この応援団は、現在9割以上が男性である企業トップに向けての施策ということですが、働く女性のために何か施策を講じているのでしょうか。
キャリアアップを目指す女性を応援する施策として、管理職の目指す女性向けに「女性リーダー育成セミナー」を実施しております。
応援団の設立以前から実施しているものになります。
また、政策決定に関わる女性の数をもっと増やすために「かなテラスカレッジ」というセミナーを実施しています。
こちらは、議員として、あるいは市町村の審議会の委員として自分たちの意見を政策に反映していく女性を増やしたり育成したりするために実施しています。
応援団は「経営者のマインド」を変えるための施策ですが、当事者に向けた施策にも両輪で取り組んでいます。