2024年のアメリカ大統領選挙は、民主党候補カマラ・ハリス氏が共和党のドナルド・トランプ氏に敗北した。
ハリス氏は11月6日、ワシントンD.C. にある出身校のハワード大学で支持者の前に姿を現し、敗北演説をした。
7月に民主党の大統領候補となり、約100日間の選挙戦の末に敗れたハリス氏。敗北演説で口にしたのは、未来のための闘いを鼓舞する言葉だった。
約12分の演説で何を語ったのか。スピーチ全文の日本語訳を掲載する。
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皆さん、こんにちは。ありがとう、ありがとうございます。私も皆さんのことが大好きです。
私は今日、胸がいっぱいです。皆さんの私に対する信頼への感謝、私たちの国への愛、決意で満たされています。
この選挙結果は私たちが望んだものでも、闘ってきたものでも、票を投じたものでもありません。
しかし、アメリカの約束の光はこの先も明るく灯り続けます。私たちが諦めず、闘い続ける限り。
大好きな(夫の)ダグと家族へ、心から愛しています。バイデン大統領とジル・バイデン博士、私を信頼しサポートして下さりありがとうございます。ウォルズ知事とご家族、皆さんの国への貢献はこれからも続くと信じています。そして素晴らしい私のチーム、支えて下さったボランティア、投票所のスタッフ、各地の選挙関係者全員に心から感謝します。本当にありがとうございます。
私たちの選挙戦と闘い方を本当に誇らしく思っています。107日間の選挙キャンペーンを通して、私たちはコミュニティーを構築し、協力体制を築き上げ、あらゆる職業や立場の人々が一つになり、国を愛する気持ちで団結し、喜びと情熱を持ってアメリカの未来のために闘いました。
私たちは、今自分たちを分け隔てているものより共通点の方がはるかに多いということを理解して、選挙キャンペーンに取り組んできました。
今、皆さんはさまざまな感情を抱いていることでしょう。その気持ちはわかります。しかし、私たちはこの選挙結果を受け入れなければなりません。今朝早く、次期大統領のトランプ氏と話し、彼の勝利を祝福しました。彼とチームに、政権移行を支援し、平和的な権力移行のために尽力すると伝えました。
アメリカの民主主義の基本原則は、選挙に敗れた時に結果を受け入れることです。それこそが君主制や独裁政治と民主主義を異なるものにします。国民の信頼を得ようとする者は、その原則を尊重しなければなりません。
同時に、私たちの国で忠誠を誓う相手は大統領や政党ではなく、合衆国憲法と自らの良心、神です。この3つすべてに対する忠誠から、私は選挙の敗北を受け入れながらも、この選挙キャンペーンの原動力となった闘いをやめることはないとお伝えします。
自由のため、機会のため、公平さのため、そしてすべての人の尊厳のための闘いです。私たちの国の核心にある理想、アメリカが最も輝く理想のための闘いです。私はこの闘いを決して諦めません。
私は、アメリカの人々が自らの夢や野心、大志を追い求められる未来のための闘いを決して諦めません。アメリカの女性たちが政府から指図されずに自分の体のことを自ら決める自由を持ち、銃による暴力から学校や街を守るための闘いを、決して諦めることはありません。
そしてアメリカの皆さん、私たちは民主主義のため、法による支配のため、平等な正義のため、出自に関係なく全ての人の基本的な権利と自由が尊重され守られるべきだという不可侵の理念のための闘いを決して諦めません。
私たちはこの闘いを投票所で、法廷で、そして公の場で続けていきます。また、日々の生活の中でも静かに実行していきます。互いに親切と敬意をもって接し、見知らぬ人の顔に隣人を見出し、自分の力を人々を元気付けすべての人の尊厳を守る闘いのために使うという方法で。
私たちの自由のための闘いは、厳しいものになるでしょう。しかし私がいつも言っているように、私たちは困難な仕事を好みます。困難な仕事は良い仕事です。喜びをもたらす仕事です。私たちの国のための闘いは、いつだって価値があるのです。いつだって。
これを見てくれている若い人たちへ。悲しみ、落ち込んで当然です。しかしどうか、大丈夫だということを知っていてください。私は選挙中に何度も「闘う時、我々は勝つ」と言いました。重要なのは、闘いは時に時間を必要とするということです。でもそれは、勝てないという意味ではありません。
大切なのは、絶対に諦めないことです。決して諦めないでください。世界をより良い場所にするための努力を止めないでください。あなたには力があります。力があるのです。だから誰かに、これまで成し遂げられていないから不可能だと言われても決して耳を貸さないでください。
あなたには、驚くような良いことを世界にもたらす能力があります。これを見ている皆さん、決して絶望しないでください。今はお手上げだと諦める時ではありません。袖をまくり、気合いを入れる時です。
今こそ、自由と正義、私たちが共に築けると知っている未来のために、まとまり、動き、関わり続ける時です。
ご存知かもしれませんが、私は検察官としてキャリアをスタートし、その中で、人生で最も困難な時期にいる人々を数多く見てきました。
その人たちが大きな傷と痛みを受けながら、自分の中に強さや勇気を見出して立ち上がり、正義のため、自分自身のため、他の人たちのために闘う姿を見てきました。そういった人たちの勇気を私たちのインスピレーションに、決意を私たちの使命にしましょう。
最後に、歴史家たちが「歴史の法則」と呼ぶ、すべての時代の社会に共通する言葉をお伝えします。それは「十分に暗くなければ、星は見えない」という格言です。
今、多くの人々が暗い時期に突入したと感じているのではないでしょうか。私たち全員のために、それが現実ではないことを願っています。しかしアメリカの皆さん、もし現実だとしても、私たちの空を輝く無数の星で満たしましょう。楽観主義、信念、真実、奉仕の光です。
HU!(ハワード大学で使われる呼びかけ。「You Know」と返す)
その無数の星が、たとえ挫折に直面しても、アメリカ合衆国が素晴らしい約束へと向かうよう、私たちを導いてくれますように。
皆さん、ありがとうございました。あなたに、アメリカ合衆国に神の祝福がありますように。ありがとうございました。
【動画はこちら】支援者を前にした敗北演説で、未来への希望を語ったハリス氏