「加計学園」問題が、新たな局面をむかえた。
朝日新聞が4月10日、愛媛県が作成したとされる「記録文書」の存在を報じた。その文書には2015年4月2日、愛媛県や今治市の職員、学園幹部と面会した柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)が「本件は、首相案件」などと述べたことが記されていた。
これに対し柳瀬氏(現:経済産業審議官)は「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」「具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間が経ってから」「外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ない」などと、朝日新聞が報じた文書の内容を否定した。
野党側は、獣医学部の新設が「加計ありき」で進められたとして、政府を追及する方針だ。
ではここで、加計学園の獣医学部新設をめぐる経緯を振り返ってみよう。
■2007年(〜14年11月) 愛媛県、今治市が獣医学部新設を提案
愛媛県と今治市は「構造改革特区」での学部新設を15回提案。いずれも却下。
■2012年 第2次安倍政権が発足
■2013年 愛媛県側、獣医学部新設の規制緩和を要望
●5月上旬
安倍首相、加計孝太郎氏(加計学園理事長)、萩生田光一氏らが河口湖畔でバーベキュー
●5月8日
教育再生実行会議で、加戸守行・前愛媛県知事が獣医学部の規制緩和を要望
●5月24日
安倍首相のミャンマー訪問に加計氏が同行
●11月
安倍首相、都内で加計氏らと食事
■2014年 安倍首相、加計氏らと複数回食事
●6月、12月
安倍首相、都内で加計氏らと食事
■2015年 愛媛県、今治市、学園関係者が首相官邸を訪問
●4月2日
・朝日新聞(2018年4月10日朝刊)が報じた文書によると、愛媛県、今治市、加計学園の各担当者が首相官邸を訪問。柳瀬首相秘書官(当時)らと面会。
・東京新聞(2018年4月10日朝刊)によると、藤原豊・地方創生推進室次長(当時)が愛媛県、今治市、加計学園の各担当者と面会し、以下のように助言したという。
「要請の内容は総理官邸から聞いている」
「政府として、きちんと対応しなければならない。知恵を出し合って進めていきたい」
「これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」
「二、三枚程度の提案書を作成していただき、早い段階で相談してほしい」
●4月13日
愛媛県、4月2日の「面会」についての記録文書を作成。
この文書では、柳瀬氏の主な発言として、「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と記している(朝日新聞2018年4月10日朝刊)。
●6月4日
愛媛県、今治市が国家戦略特区での学部新設を提案
●6月30日
「日本再興戦略」の改訂を閣議決定。「4条件」を付した「獣医師養成系大学・学部の新設検討」が盛り込まれる
●8月、9月
安倍首相、山梨県内で加計氏らと食事、ゴルフ
●12月24日
安倍昭恵氏がFacebookに安倍首相と加計氏らが懇談する写真を投稿
■2016年 文科省は獣医学部新設に慎重姿勢
●1月29日
今治市、国家戦略特区に指定される
●3月18日
安倍首相、都内で加計氏らと食事
●3月24日
京都府が国家戦略特区での獣医学部新設を提案
●7月21日〜22日
安倍首相、山梨県内で加計氏らと食事・ゴルフ
●8月10日
安倍首相、山梨県内で加計氏、秘書官らと食事
●8月11日
安倍首相、山梨県内で加計氏らとゴルフ
●9月16日
文科省、国家戦略特区ワーキンググループで「具体的な需要が明らかになってから検討」と獣医学部新設に慎重な姿勢示す。
●9月21日
国家戦略特区今治市分科会の初会合。今治市側が獣医学部新設の構想を説明
●9月26日
内閣府、文科省の関係者が打ち合わせ。文科省、2018年4月の獣医学部開設が前提だと「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと内閣府から伝えられたという文書を作成。
●10月2日
安倍首相、都内で加計氏らと食事
●11月9日
国家戦略特区諮問会議で「広域的に存在しない地域」での学部新設を認める方針が決まる
●12月24日
安倍首相、都内で加計氏らと食事
■2017年 「加計問題」が明らかに
●1月4日
内閣府と文科省、今治市での獣医学部新設を特区に認定。事業者の公募を開始。
●1月20日
・唯一の応募者だった加計学園に決定
・安倍首相は加計学園の学部新設計画について、この時に初めて知ったと説明(2017年7月25日、参院予算委員会で答弁)
●5月17日 朝日、加計問題で「総理のご意向」報道
・朝日新聞が加計学園の獣医学部新設をめぐり、「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などと記された文書の存在を報道。「加計問題」めぐる報道が始まる
・菅義偉官房長官「全く、怪文書みたいな文書じゃないか。出どころも明確になっていない」と文書の存在を否定
●5月22日
読売新聞が前川喜平氏(前文科事務次官)について「出会い系バー通い」と報道。「教育行政のトップとして不適切な行動」などと伝えた
●5月25日
前川氏、加計学園を前提に獣医学部新設の検討が進んだとして「行政がゆがめられた」。朝日新聞がインタビューを伝える
●6月15日 文科省、「総理のご意向」文書の存在認める
松野博一文科相(当時)、加計学園の手続きをめぐり「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などと記された文書14通の存在が確認されたと発表。
●7月10日 国会・閉会中審査で加計学園問題を議論
・前川氏 「平成30年4月開学が大前提だった」「初めから加計学園に決まるよう進めてきたとみえる」
・加戸氏「『加計ありき』と言うが、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけ」「愛媛県にとって12年間、加計ありき。ここ1〜2年の間で『加計ありき』ではない。愛媛県の思いが、この加計学園の獣医学部に詰まっている」
●11月14日
林芳正・文科相、加計学園の獣医学部の新設を認可
■2018年 加計学園の獣医学部、開学
●4月3日
加計学園、岡山理科大・獣医学部で入学式
●4月10日
朝日新聞が愛媛県が作成したとされる「記録文書」の存在を報道
■そして、今後は...
4月11日、国会では予算委員会で集中審議が開かれる。森友学園をめぐる財務省の文書改ざんや、防衛省による日報の隠蔽疑惑など公文書管理の在り方が問題となっている中、新たに加計学園をめぐる文書が焦点となったことで、野党側はさらに攻勢を強めるものとみられる。
【UPDATE】愛媛県知事、"首相案件"文書の存在認める「職員の備忘録」 (2018/04/10 18:33)
加計学園の愛媛・今治市での獣医学部新設計画をめぐり、愛媛県が作成したとされる「記録文書」の存在が判明した問題で、中村時広・愛媛県知事が「職員が備忘録として書いたことは間違いない」と、文書の存在を認めた。(詳細は⇒こちら)