家事・育児分担、見えない負担、「名もなき家事」ーー。
東京都は11月21日、「男性の家事・育児実態調査(2023年度)」の結果を発表しました。
調査結果からは、男女間の意識の差や本音が浮かび上がりました。
夫婦で育児・家事の満足度を上げるためには、どうすればいいのでしょうか。
都内在住5000人に調査
調査は7月21日〜8月21日にインターネット上で行い、都内在住の5000人(男女各2500人ずつ)が回答しました。
5000人の内訳は、未就学児をもつ男女4000人(男女各2000人)と、18〜69歳の男女1000人(男女各500人)。
家事や育児に関する妻・夫の本音と実態、男性の育業、子育て世代の職場環境、男性の家事・育児参画への考えなどを聞いています。
なお、今回の調査結果のポイントについては、子育てアドバイザーの高祖常子さんと、東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎さんが解説しています。
「家事・育児分担」夫は満足も、妻は…
まずは、「夫婦間における家事・育児分担」についてです。
調査結果によると、男性は8割に近い78.3%が「満足している」と回答した一方、女性は半数を超える52.1%が「不満がある」と答えました。
女性が不満に思う事例としては、「自分が言わないと家事・育児をしてくれない」が37.7%で最多でした。
このほか、「やってくれるのが当たり前だと思っている」(30.5%)、「雑である、言ったとおりにやってくれない、手順が違う」(30.3%)などがありました。
「言われる前に率先して家事・育児に取り組んでほしい」や「全てヘルプでしかないので、当事者意識を持ってほしい」、「 気づいた方がする家事に全然気づいてくれない」などといった声も上がったといいます。
この項目について、子育てアドバイザーの高祖常子さんは次のようにアドバイスを送っています。
「『察してほしい』は伝わらないと心得ましょう。そもそも8割近くのパパは現状に満足しているの で、ママの大変さや困りごとに気づいてないといえるでしょう。ぜひパパにも「そうなのか!」と気づいてほしいですね」
「『なんでやってくれないの?』ではなく、『私はこれで困っているから、やってほしい』」と、自分を主語にして、相手も自分も大事にしながらコミュニケーションを取ってみましょう」
家事・育児時間は?見えない負担って何?
次は、「あなた自身と配偶者の家事・育児時間」について教えてください」という問いです。
女性から見た配偶者の家事・育児時間は、74.3%が「1時間未満」で最多でした。
一方、男性から見た配偶者の家事・育児時間は、「2〜4時間」が34.6%と最多。しかし、女性は49.7%が「8時間以上」の家事・育児に割いていると回答しています。
つまり、家事・育児については、自分の時間は多く見積り、相手の時間は少なく見積もる傾向にあり、配偶者の家事・育児をしっかり把握できていないということになります。
これが「見えない負担」です。
「名もなき家事」は負担や不満につながる
また、「名もなき家事」というのもあります。
消耗品の購入や補充、散らかったものの片付け、献立を考えるなど、生活する上では欠かすことのできないちょっとした家事のことです。
この名もなき家事こそ、家庭内の負担や不満につながると言われており、今回の調査でも、男性は「夫婦で分担している」という回答が多い傾向にありましたが、女性は圧倒的に「自分がやっている」と答えたことが明らかになりました。
日々の生活の中で発生する細かいことだからこそ、相手に見えづらく、ストレスの原因につながるのかもしれません。
感謝の気持ち、コミュニケーションが大事
では、家事・育児分担において「夫婦の満足度を上げる秘訣」は何でしょうか。
「夫婦間における家事・育児分担の満足度を上げるために重要だと思うことは何ですか?」と聞いたところ、「夫婦でよく話し合い、協力する」と「お互いが感謝の気持ちを伝える」が、男性・女性ともに6割超となりました。
しかし、配偶者とのコミュニケーションについての問いでは、「十分にできている」と答えたのは男性17%、女性14.1%にとどまった。
頭ではわかっていても、なかなか行動に移せていない現状が浮き彫りになりました。
東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎さんは、「今の時代、子どもを持つことの大変さが強調されすぎているように思いますが、子どもを持つということは、ほかの何ものにも代えがたい喜びを得るということでもあります」と指摘。
その上で、次のようにコメントしました。
「個人的には、『なんで今までこんなに一生懸命仕事をしてたんだろう』と、価値観が 180 度転換しました。周りの人はあなたが思っているよりもずっと協力的です。計画的な育業(育児休業)で、同じスタートを切ることが夫婦円満の秘訣!ぜひ協力しながら、育児・家事を進めていってほしいですね」