内部告発情報サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ氏(47)が、捜査当局による身柄拘束から逃れるために身を寄せているロンドンのエクアドル大使館を退去する可能性が出てきた。
大使館への駆け込みから6年。一体何があったのか。
「アサンジ氏には、(大使館を)退去し、自由へと踏み出す道がある」。12月6日、エクアドルのレニン・モレノ大統領は地元のラジオ番組に出演し、こう述べた。ロイター通信が伝えた。
アサンジ氏がロンドンにあるエクアドル大使館に駆け込んだのは2012年。この2年前、アサンジ氏はアメリカ同時多発テロ(2001年)を受けて始まったアフガニスタン戦争に関するアメリカ軍の機密文書や、アメリカの外交公電などを大量に公開し、アメリカ政府の怒りを買っていた。
一方で、スウェーデンの捜査当局が性的暴行容疑でアサンジ氏の逮捕状を取り、国際指名手配。ロンドン警視庁が出頭してきたアサンジ氏を逮捕した。
アサンジ氏はスウェーデンに移送されることになったが、機密文書の暴露をめぐって最終的には身柄がアメリカに引き渡されると懸念。保釈中だった2012年にエクアドル大使館に逃げ込み、政治亡命が認められた。
エクアドルは当時、ほかの南米諸国とともに反アメリカ路線を取っていた。ところが2017年5月に今のモレノ大統領が就任すると、アメリカとの外交関係の改善に乗り出した。
背景には、低迷する経済の立て直しを図る中、反アメリカ陣営のリーダー国ベネズエラが、原油価格の低迷で力を失い、支援を当てにできなくなったことにある。
アメリカに接近するためには、アサンジ氏はエクアドルにとって「障害」になっていた。
イギリス紙「ガーディアン」の電子版によると、モレノ大統領は「死刑がある国にアサンジ氏の身柄を移すことはないと、イギリス政府から文書による保証を得た」と明かした上で、「アサンジ氏が大使館に滞在し続けることは好ましくない」と発言。アサンジ氏側に対し、大使館からの退去を求めた。
だが、ブルームバーグによると、アメリカ連邦検察が最近、アサンジ氏を起訴したことが明らかになっており、アサンジ氏がモレノ大統領の要求をすぐさま受け入れるかは未知数だ。