アメリカで、テレビ司会者やコメディアン、政治評論家として活躍するジョン・スチュワート氏が、アーカンソー州司法長官と交わしたやりとりが、反響を呼んでいる。
アーカンソー州では2021年、性別違和を抱える18歳未満の若者に、ジェンダー・アファーミング・ケア(ホルモン治療や第二次性徴抑制薬などの医療ケア)を禁じる法律を可決した。
その後、裁判所はこの法律の一時的差し止めを言い渡したが、レスリー・ラトリッジ州司法長官は決定を不服として控訴している。
スチュワート氏は、10月7日に公開されたAppleTV+の番組「ザ・プロブレム・ウィズ・ジョン・スチュワート(The Problem With Jon Stewart)」で、ラトリッジ氏にインタビュー。
「なぜアーカンソー州は、子どもの親たちや、医師や精神科医、内分泌学者の考えに立ち入り、彼らが作ったガイドラインを無視するのでしょうか?」と尋ねた。
この問いかけに、ラトリッジ州司法長官は、「子どもたちに、医療を提供する必要がないと言う別の専門家もいます」と反論。
さらに、「州議会で、医師や多くの人が、性別違和を持つ若者の98%が乗り越えられると証言しました。そして、必要な支援を受ければ、 性別違和に苦しむことはなくなると言いました。98%が治療なしにです」と述べた。
この回答に、スチュワート氏は「ワオ。 それは信じられないほど、作り上げられた数字だ」と驚き「それは、どの医療機関が出した研究や文書のとも一致しません。どこの医師会の話ですか?」と尋ねた。
するとラトリッジ州司法長官は、「私たちの立法過程にすべてが記録されていますから喜んで提供しますが、すぐにその名前が思い浮かびません」と答えた。
性別違和を抱えている子どもたちも亡くなっている
さらにスチュアート氏は、アーカンソー州が、ジェンダー・アファーミング・ケア以外の健康問題についてはアメリカ医師会などのガイドラインに従っていると指摘。
小児がんと比較して「あなたの子どもが小児がんを患っていたとして、州が介入して『医師は化学治療を勧めているが、我々はあなたにそれを受けさせられない。別の診断を受けるべきだ。主流ではないものの、別の団体がある。そこで治療を受けるべきだ』と言われたら、受け入れられますか?」と尋ねた。
ラトリッジ氏はこの問いを「極端」で「議論に合致していない」と批判し、小児がんで子どもを亡くした友人がいると伝えた。
それに対してスチュアート氏は「悪いニュースがあります。性別違和を抱えている子どもの親たちも、自殺やうつで子どもを亡くしています」と述べた。
「そして、主流の医療機関は、相互審査したデータや研究をもとにガイドラインを制作し、それに沿ってメンタルヘルスを改善しています。なぜあなたが、州のその他の健康問題ではアメリカ医師会や小児科学会のガイドラインに従うのに、この問題だけそうしないのかわからない」
再び医学的根拠を答えられず
さらに、動画の最後で「アーカンソーの子どもたちを守るための法律だ」と再度主張するラトリッジ氏に、スチュアート氏は「医学界は同意していない」と指摘。
ラトリッジ氏は「すべての医学界ではない」と反論したものの、「どの医学団体が同意していないのか」と尋ねられると、専門家や医師会の名前を挙げられず、その理由を「最高裁判所の議論を想定していなかったから」と説明した。
このインタビュー動画はSNSで拡散し、「事実や証拠を突きつけられた時、反トランスの人たちがどれだけ中身がないかを証明してくれた」など、スチュワート氏に賛同する声が多数投稿されている。
この18歳以下のジェンダー・アファーミング・ケアを禁止するアーカンソー州の法律を巡り、10月には永久的な差し止めを議論する裁判が予定されている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。