「伊藤忠さん、神宮の緑を守ってください!」
東京都港区の伊藤忠商事本社前で4月5日、明治神宮外苑の再開発の見直しを求めるデモが開かれ、集まった70人もの人々が声を上げた。
デモが開かれた伊藤忠商事は、再開発に携わる事業者の1つだ。
この事業では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて新築し、さらに高さ190メートルや185メートルの高層ビルが建てられる。
その過程で少なくとも3000本の樹木が伐採されることがわかっており、2022年2月に署名活動が始まるなど、市民や専門家による反対運動が続いている。
5日のデモに集まった人々は、「樹木伐採やめて」「木を殺さないで」などのメッセージや緑の紙を、伊藤忠商事の建物に向かって掲げた。
参加者の一人は「緑は東京の宝です。事業者が最初に言っていた1000本という伐採数だけでもひどいのに、蓋を開けたら3000本も切られるという。本当にひどい」と怒りの気持ちを語った。
「事業者はいちょう並木は切らないと言っていますが、今の計画でいけば根が大きなダメージを受けると言われています。そんな大事な問題なのに、メディアでは全く大きく取り上げられず、ほとんどの人が知りません。いても立ってもいられない気持ちで、今日は参加しました」
また、伊藤忠商事に対しては「再開発の問題を真剣に考えてほしいです。企業としてSDGsを掲げているのなら、自然を壊すのではなく目の前の身近な緑を守って、社会貢献をしてほしい」と述べた。
神宮外苑の再開発には、3月28日に亡くなった音楽家の坂本龍一さんも見直しを求める声を上げていた。そして、東京都の小池百合子知事らに宛てた手紙の中で「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」と訴えていた。
デモの主催者の一人である大学1年生の楠本夏花さんは、坂本さんの行動や想いに、今後も勇気づけられるだろうと語った。
「自分が体調が悪い時には、他の人のことを考えるのは難しいと思います。それなのに、坂本さんは最後の力を振り絞り、100年先の人のこと、未来のこと、私たちのこと、いろんな人の気持ちに耳を傾けて、一緒に声を上げてくれました。(坂本さんの想いは)これから先、いつも背中を押してくれると思いますし、自然を守り続けていきたい」と述べた。
楠本さんたちは、3月24日にも東京都庁前で開催したサイレントデモを開くなど、神宮外苑に見直しを求める声を上げ続けている。
5日のデモには24日よりも多くの人々が参加し、「庶民の憩いの場を奪わないでほしい」「次の世代に高層ビルだらけの東京を残したくない」と思いを口にした。
神宮外苑の再開発は、伊藤忠商事の他に、三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センターが事業者になっている。