東京都の小池百合子知事は、市民による反対運動が起きている明治神宮外苑の再開発について、事業者に対する勧告などは検討していない意向を示した。
小池知事は2月13日、日本外国特派員協会の記者会見で、再開発についての質問に答えた。
この再開発では1000本近くの樹木が伐採や衰退の危機にあり、専門家は工事により神宮外苑のシンボルであるいちょうの根が傷つけられ、枯れる可能性があると警鐘を鳴らしている。
さらに、ユネスコの諮問機関である日本イコモスは1月、事業者が提出した環境影響評価(アセスメント)の評価書には、数多くの「虚偽の報告や資料の提出」があるとする調査書を発表。都知事による事業者に対する勧告と、環境影響評価審議会の再審を求めている。
「緑は増える」と説明したが…
このイコモスの要請について聞かれた小池知事は、「(事業者に対して)4列のいちょう並木の保全に万全を期すということは強く要請しているし、それを変更するということは聞いていない」と述べた。
さらに、樹木は現在1904本あるが、再開発によって1998本に増え、緑の割合は25%から30%に増えると説明した。
小池都知事はこれまでも「樹木数や緑の割合が増える」と述べてきた。しかし複数の環境や都市計画の専門家は、この説明は誤解を招くものだと指摘している。
千葉大の藤井英二郎名誉教授は「100年の大木と、新たに植える若木ではレベルが全然違う。緑の持つ効果は増えるどころか、確実に損なわれる」と東京新聞の取材で述べている。
さらに、明治大学の大方潤一郎特任教授は、25%から30%に増加するという「緑の割合」について、「オフィスビルのデッキの緑化や屋上緑化なども含めたもので、実際は緑の質・量ともに低下する」と指摘している。
計画を止められるのは都知事
明治神宮外苑は、全国からの献木や寄付、ボランティアによって作られた100年の歴史がある「都会の森」だ。
このことについて小池知事は、「再開発や樹木の植え替え、新たに献上される樹木を植えることで明治神宮を作った時の志が保たれる。新たな100年を作っていこうというものだと報告を受けている」と述べ、「これまで築いてきた100年」ではなく「これからの100年」を重視する姿勢を示した。
また、小池知事は再開発事業について「東京都の事業ではなく、これは明治神宮が主な事業者である」とも強調した。
一方、東京都の環境影響評価条例第91条には、「事業者が虚偽の報告もしくは資料の提出をした場合、知事は事業者に対し、必要な措置を講ずるよう勧告することができる」と書かれており、小池知事がどうするかの判断が問われている。