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多数の樹木伐採を伴う明治神宮外苑の再開発に対し、さまざまな立場の人たちが見直しを求め続けている。
3月29日には、専門家や市民、国会議員が共同で記者会見を開き、樹木伐採の回避と、事業者との直接の話し合いを求めた。
コモンズが利益追求のために失われる
文化遺産保存の専門家からなる日本イコモス国内委員会の石川幹子理事は、「コモンズ(誰もが自由に利用できる共有の場所)」である神宮外苑が、利益追求のために失われる、と強い危機感を訴えた。
石川氏によると、神宮外苑は「市民が楽しみ、憩う場所」として機能してきた。また、日本初の風致地区(都市にある優れた自然的景観を維持するために指定された地域)に指定された場所でもある。
それにも関わらず、今回の再開発では都の「公園まちづくり制度」を利用して、高さ約190メートルの高層ビルを含む高層建築物が複数建築され、その過程で多くの樹木が伐採される計画となっている。
さらに、再開発を進めるために、規制の厳しい風致地区AもしくはB地域から、規制の緩いS地域に変更したこともわかっている。
石川氏は「コモンズが危機に瀕しています」と強調。 「外苑は志を持って作られました。私たちはこの志をこれから100年継承していきたい」と訴えた。
「コモンズ」が奪われることで、大きな影響を受けるのが子どもたちだ。
「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の代表の加藤なぎささんは、近隣の地域で2人の子どもを育てている。
加藤さんは記者会見で「子が育つ一番大切な時間に、緑の環境を奪ってしまう」と懸念を表明した。
再開発は今後13年かけて2035年まで行われる予定だが、緑が失われることに加え、工事用車両の往来や通学路の安全など、子育てをする親として不安は尽きない。
「この問題を見過ごしてしまっては、子ども達に将来顔向けできないと思っている」と述べた加藤さん。事業者に住民と対話型の説明会をしてほしいと訴えた。
国会議員「小池知事に面談を2度断られた」
記者会見には2022年11月に発足した超党派の「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」の議員も出席した。
自民党の船田元衆議院議員は、秩父の宮ラグビー場と神宮球場の場所を入れ替えて建て替える計画を問題視。
この建て替え工事では多くの樹木が伐採される上、イチョウ並木の根を傷つけて枯れてしまう可能性が高いとする調査結果も出ていると強調。
神宮球場より2年古い甲子園球場は改修を経て今でも問題なく使われていることにも触れ「立ち止まって、この計画を根本的に見直していただきたい」と語った。
また、2月の衆議院予算委員会で、国としてイチョウ並木の名勝指定を東京都に促すよう文化庁に求めた立憲民主党の阿部知子衆議院議員は「仮指定も含め、もう一度もイチョウ並木の名勝指定を国会で提案していきたい」と述べた。
同じく立憲民主党の篠原孝衆議院議員は「計画を止められるのは小池都知事だ」として、小池知事に100年後もイチョウ並木を守るために行動してほしい、と求めた。
「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」は、これまで小池知事に2度面会を求めたものの、どちらも多忙を理由に断られたという。
伐採数は1万本近くになる可能性も
小池知事は2月、多くの反対の声が上がる中で、再開発事業を承認。神宮外苑では、3月22日から第二球場の解体作業が始まっており、一部の地域はすでに囲いで覆われている。
また、事業者が2月に新宿区に提出した許可申請書から、神宮第二球場と建国記念文庫の森周辺で伐採・移植される樹木は、低木を含めると3000本を超えることがわかっている。
ただし、これはこの地域だけの本数だ。日本イコモス国内委員会の石川氏は会見で、今後10年以上かけて工事をしていく中で、再開発全体の伐採数は1万本近くになるのではないかと懸念を表明した。
記者会見の後、石川氏らは再開発が行われる神宮外苑に場所を移し貴重な樹木が失われつつある現状について、現地で説明した。
また日本イコモス国内委員会は29日、東京都環境影響評価条例第七十四条の二に基づいて、イコモスが都の環境影響評価審議会で説明や資料を提出する場を設けることを求める緊急要請を、小池知事宛に出した。