住民団体の代表も「参加資格がない」神宮外苑再開発の説明会に住民側が反発

近隣の住民が求めてきた説明会。しかし要望していたオープンな形ではなく、参加者は周辺380メートルに限定されました
明治神宮外苑
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住民らが都を相手取って事業認可の取り消しを求める裁判を起こしている東京・明治神宮外苑の再開発で、事業者側による住民への説明会が7月下旬に開かれる予定だ。

この説明会の開催方法を巡り、住民らが反発を強めている。

住民側が「参加者を限定しない、オープンで対話形式の説明会」を開くことを求めてきたのに対し、事業者側が説明会の出席資格を「再開発の敷地の外枠から380メートル以内の住民や、その範囲に事務所がある法人」と限定したからだ。

そのため、説明会の開催を求めてきた住民団体の代表も、このままでは参加できない状況になっている。

神宮外苑再開発とは

いま計画されている神宮外苑の再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えたうえで建て替えることに加え、高さ190メートルや185メートルの高層ビルが建築される予定だ。

工期は10年以上にわたり、多くの樹木が伐採されることになる。また、これに伴い外苑の軟式野球場やフットサルコートなど、子どもたちがスポーツする場所が廃止となる。

これに対して近隣の住民らは、「緑豊かな神宮外苑は、都心のオアシスとして多くの人の憩いの場で、近隣の子どもたちが青空の下でスポーツを楽しめる空間になってきた」と指摘。

「十分な事前説明がないまま再開発が進められている」と不安を訴え、都に事業認可の取り消しを求める訴訟を起こしたほか、参加者を限定しない形式での説明会の開催を要望してきた。

住民団体の代表も説明会の「対象外」に

住民側は、参加者を限定しない説明会の開催を求めてきた理由を

・神宮外苑は国内外から多くの人が訪れる場所であり、見直しを求める署名には21万人以上が賛同している

・この場所は約100年前に国民の献金や献木、勤労奉仕により作られた場所で、敷地の約4分の1は、国が日本スポーツ振興センターが出資しており、もともとは国民の共有財産

としてきた。

地元の子育て世帯や住民らでつくる「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」代表の加藤なぎささんは、「オープンな対話だけを求め続けてきましたが、受け入れられず残念です」と話す。

事業者が指定した範囲では、最も近い小学校の一部学区も対象外となる。代表の加藤さん自身も自宅や会社が「380メートル」を超えるため、説明会には参加できないという。

樹木に囲まれた神宮球場
樹木に囲まれた神宮球場
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なぜ380メートル?

対象者を380メートル以内と限定した理由について、事業者代表の三井不動産は「東京都の都市再生特別地区提案の過去の説明会を参考に、当計画で建築する最も高い建物の高さ(190メートル)の2倍を目安として、約380mに対象範囲に設定した」と、ハフポスト日本版の取材に説明した。

三井不動産は「時間や場所に制限を設けない動画公開、およびプロジェクトサイトでの質問受付・後日回答という形式で、出来る限り多くの皆様に説明をし、双方向のやり取りができる機会を設けることで事業者としての説明責任を果たしてまいります」としている。

これに対し、「有志の会」の加藤さんは、ウェブサイトでの質問の回答では「双方向」とは言えないとしたうえで、「開発に反対するとして署名されている方々が、国内外問わず21万人もいらっしゃる、このことにまず目を向けていただきたいです」と語る。

「地域住民だけでなく国民全体の関心ごととなっているのに、範囲を区切る姿勢こそ、この場所の価値を見誤っていると感じ、その先の開発に心配が募ります」

「そして、その場での対話ではなく、質問を預かったうえで選別して回答する理由が見当たりません。未来を想い、人々のための開発であるなら、ありのままをお答えいただければ良いだけです。多くの子育て世帯が、必要な改修であると理解でき、コンセプトやビジョンに共感できる部分があればそれは受け入れる姿勢です。そのために丁寧に対話をして、耳を傾けてほしいと思っています」

神宮外苑で6月25日に開かれた「ヒューマンチェーン」の抗議活動
神宮外苑で6月25日に開かれた「ヒューマンチェーン」の抗議活動
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「説明会は計画変更を意味しない」

事業者側は説明会の開催にあわせて、計画内容の説明動画の配信と、質問受付ページを設ける予定だ。ただし、「説明会後に、計画を変えることはない」としている。

これについて三井不動産は「計画に関する一部の誤情報などにより多数のご意見をいただいていることや、事業者からの説明が不足しているという印象を持たれていると認識しております」との見解を示した上で、説明動画や質問受付ページの公開、説明会実施の目的は「双方向でのやり取りの機会を設け、本計画にご理解をいただくため」と説明した。

加藤さんは「誤解があるというのなら、参加者の範囲を区切らず専門家の出席も妨げないかたちで説明会を開くべきです」

「求められれば、どんなに小さい単位の団体でも出向いて説明と対話を繰り返す。大規模な説明会が運用上難しいと感じるなら、逆にそれくらい小さくて丁寧な説明会を提案いただきたいと思います」と語る。

説明会開催の発表を受け、有志の会は改めて、対話の場を設けるよう求める抗議文を、事業者側に提出した。また、事業者の一つである日本スポーツ振興センターに対し、参加資格を範囲で区切らず、意見交換ができる説明会の追加開催を求めた

説明会は7月17〜19日の3日間、開催される予定だ。案内状を投函された住民だけが出席でき、メディアには非公開となる。

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