神宮外苑再開発とは?>>【5分でわかる】神宮外苑の再開発、何が問題になっているの?知っておきたい5つのこと
「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会(以下・未来へ手わたす会)」が、東京・明治神宮外苑の樹木伐採中止と再開発計画見直しを求める緊急声明を発表した。
未来へ手わたす会は、2013年から神宮外苑の歴史や緑を将来世代に伝えるための活動を続けている団体だ。
共同代表で作家の森まゆみさんと建築家の大橋智子さんは9月4日、東京都庁で記者会見し、再開発を承認した東京都の小池百合子都知事に、考えを変えて計画を見直すよう求めた。
78人の識者や著名人が賛同
神宮外苑再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、高さ190メートルや185メートルの高層ビルを建築する計画になっている。
未来へ手わたす会は声明で、「美しい4列の銀杏並木のすぐ横に高い神宮球場(ホテル付き)がそびえ、秩父宮ラグビー場は場所を変えて屋根付きでより高くなり、そのほか 190m、185m、80mの超高層ビルが建ちます」とつづっている。
「草野球場の広場は高級テニスコートになり、屋根付きの室内テニス場もできます。そして100年を生きた大樹も1000本近く切られそうです。環境アセスメントも不十分で、都知事も環境を守る手段をとろうとはしていません」
未来へ手わたす会は、8月にこの声明を発表。9月4日までに、俳優の秋吉久美子さんや作家の浅田次郎さん、椎名誠さん、ミュージシャンの加藤登紀子さん、フランス文学者の奥本大三郎さんら78人の識者や著名人が賛同している。
賛同者たちは手書きやメールでメッセージも寄せており、「東京の誇る百年の緑景観を破壊する、これほどの愚挙はありません」(作家・太田和彦さん)、「世界の人々からも尊敬され、愛される東京を作り上げるためにも絶対に守らねばならない森です」(法政大学特任教授・陣内秀信さん)などの声が集まっている。
見直しを求める声が後押し
未来へ手わたす会は「都心の貴重な緑地である神宮外苑と、1958年築の国立競技場を未来へ手わたすこと」を目的として2013年に結成された。
国立競技場は、2015年にザハ・ハディッド氏のデザイン案が撤回されたものの、再度のコンペを経て現在の新国立競技場が建設された。
約10年にわたり活動を続けている同会が今回の声明を発表する後押しとなったのが、再開発の見直しを求める世論の高まりだ。
音楽家の坂本龍一さんや村上春樹さんも反対の声を上げたほか、9月2日には、サザンオールスターズの桑田佳祐さんが、新曲「Relay〜杜の詩」は坂本龍一さんの思いを受け止め神宮外苑をテーマにした曲であると自身のラジオ番組で明かした。
そういった見直しを求める声が高まる一方で、事業者は8月25日に新たに25本の樹木の伐採許可申請を新宿区に提出。9月には30本の伐採を予定している。
未来へ手わたす会は声明で「神宮外苑には、1923年の関東大震災の時もまだ完成前でしたが、5万人が避難し、命を救われました。現在もその緑は木陰を造り、ヒートアイランドを緩和する役割を果たしています。これ以上、都心の緑が減らないこと、むしろ増やすことを心から願います」と訴えている。
神宮外苑を未来へ手わたす
伐採に加えて、大橋さんらが懸念するのが神宮外苑のシンボルにもなっている4列のいちょう並木の衰退だ。
事業者は4列のいちょう並木は守ると約束しているものの、中央大学研究開発機構教授の石川幹子氏の調査で、一部が枯れ始めていることが確認されている。
大橋さんは記者会見で、今すぐに対応が必要だと述べ、「ぜひ小池さんに現地に行って見ていただきたい」と訴えた。
森さんも「4連のいちょう並木は東京の顔であり、他にはありません。失ってはならない景観だ」とその価値を強調した。
サザンオールスターズの「Relay〜杜の詩」には「自分が居ない世の中 思い遣るような人間(ひと)であれと」という歌詞がある。
大橋さんと森さんは、「桑田さんは歌詞で自分がいなくなった時のことを思う人になるということをおっしゃっている」と述べ、神宮外苑の「歴史と緑」を未来へ手わたしてほしいと訴えた。