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「明治神宮外苑の自然環境には、284億7624万4544円の価値があることが明らかになりました」
今ある緑を未来に残したいという想いで活動している学生団体Amamoが4月26日、都庁で記者会見し、東京・明治神宮外苑の環境価値を経済的に評価した調査結果を発表した。
Amamo代表で上智大学2年生の楠本夏花さんは「事業者にはこの数字を重く受け止めてほしい」と述べた。
多くの樹木が犠牲になる神宮外苑再開発
神宮外苑の再開発では、三井不動産・伊藤忠商事・明治神宮・日本スポーツ振興センターが事業者になり、神宮球場と秩父宮ラグビー場を場所を交代して建て替えるほか、190メートルと185メートル、80メートルの高層ビルを建築する。
この失われる神宮外苑の自然環境を、経済的な尺度で評価するとどれくらいになるのか――。
Amamoは、神宮外苑の自然環境の経済的価値を可視化するために、専門家とともに環境価値の調査を実施した。
どんな調査だったのか
今回Amamoが使ったのは、環境改善に対する支払意思額や、環境悪化に対する受入補償額を尋ねることで環境の価値を評価する「仮想評価法」という手法だ。
東京都民3000人を対象に、神宮外苑の自然環境を守るためにいくら負担できるかをアンケート調査で尋ね、平均金額を算出した。
その結果、回答者が「神宮外苑の樹木と景観を守るために払ってもよい」と答えた金額は、平均値が3872円で中央値が812円だった。
この値に今回の調査対象である東京都の世帯数735万4402をかけた結果、神宮外苑の自然環境の価値は、平均値で284億7624万円4544円(中央値で約59億7177万4424円)と導き出された。
楠本さんはこの結果について「神宮外苑には、経済的価値が284億円も存在することがわかりました。それは東京都民の意思ということなります。事業者にはこの数字を重く受け止めていただき、今後の再開発の是非を議論する材料の一つとして用いてほしい」と述べた。
多くの人たちがこの再開発について知らない
今回の調査では、他にもわかったことがある。
神宮外苑の再開発計画を知っていたか尋ねたところ「全く知らない」と答え人たちが、3000人のうち1333人と約半数を占めた。
この結果についてAmamoは「都民の財産であり、国内・海外から多くの観光客を迎え入れる神宮外苑で、都民への十分な説明がないまま再開発が進められている」と指摘する。
さらに、再開発の賛否についての質問では「どちらでもない」と答えた1167人を除くと、「反対」が972人で最も多く、「賛成」の469人の2倍以上だった。
Amamoは大学生と高校生からなる団体で、今回この調査を行うためにクラウドファンディングを実施して、調査に必要な約50万円を集めた。
恣意的なデータ収集にならないよう、聞き取り調査にはアンケート専門会社を採用し、上智大学や東北大学の環境経済学専門家からサポートや助言を得ながら調査・分析を取りまとめた。
楠本さんはこの調査を行った一番の理由を「事業者が、神宮外苑の現在の自然環境の価値に全く目を向けていないため」と説明した。
「事業者側はこの再開発で失われようとしている自然環境の価値をほとんど無視しています」
「自然資源は、市場経済の中ではただ同然に扱われてきました。環境には価値が存在しないという考え方が、自然資源の過剰な消費や、今回のような自然環境を大きく犠牲にする都市開発を引き起こしています」
「自然環境の価値をほとんど無視した状態で計画を強行することを少しでもストップするため、私たちは価値を可視化できる調査を行うことに決めました」
住んでいる人々の意向が尊重されるべき
Amamoは今回の調査から「神宮外苑再開発計画は、未だ都民の十分な納得を得ていないことが明らかになった」と指摘。
公共事業や都市開発を行う際には、目先の経済効果や利益だけではなく、犠牲にされるであろう環境価値も可視化して議論の材料の一つにすべきだ、と訴えている。
さらに、楠本さんは記者会見で「まちづくりや都市計画は街のために行われるもので、一番尊重されるべきはそこに住んでいる人々の意向だ」とも強調した。
さらに、神宮外苑の近隣に住む地元住民が対話型の説明会を開くよう事業者に求めているが、事業者は開催について未だに回答していない。
多くの市民による、再開発に対する抗議のアクションも続いている。
26日夕方にも都庁前で抗議デモが開かれ、参加者の一人が「まちづくりの基本は住民参加です」「神宮外苑の再開発は国民を、住民を無視したまま進められている」と訴えた。