「自分らしいキャリアを歩む」といっても、"自分らしさ"に気づいている人がどれだけいるだろうか。自分の強みは何か、今の仕事に自分は向いているのか、新たな職種への挑戦はアリなのか...結果として、能力の限界を感じてしまう人もいるだろう。
「自分らしさがわからないなら、まずは求められる成果を120%出したほうがいい」
そう語るのは、エン・ジャパンで新規事業の営業リーダーを務める柴本だ。2005年に中途で入社。福岡支社からキャリアをスタートさせ、地元の中小企業の採用をサポート。東京へ異動してからは大手企業の専任となり、トップセールスにのぼりつめる。
2012年に営業企画職へ転向してからは、営業ツールの作成から新人研修まで営業の支援に関わるさまざまな施策を企画実行。新人育成の分野でも高い評価と実績をつみあげてきた。
そして、2017年。ふたたび営業の道へ。さまざまな職種・場所で高いパフォーマンスを発揮し続ける柴本に、自分らしいキャリアの歩み方を聞いてみた。
働いていると、自分にとって「仕事」とは何かを考え、悩むときがあると思う。柴本がその悩みにぶつかった時、見つけた答えは「人に求められ続ける」ということだった。
「将来に対する明確なビジョンがない中で、無理にでも自分の進む道を決めようと思ったこともあった。ただ、とりあえず立ち止まったり、環境を変えたら何とかなると思えるほど不明確な未来に期待もできなくて。
それよりも、今いる環境で力を尽くして、自分がやりたいことを見つけた時「任せたい」と思ってもらえる人でありたいと思った。」
そのためには、今いる環境で成果を出し続けることが何よりも大切だ。大きなことでなくても良いと彼女は言う。まずは与えられた目標を達成すること。その上で、何があればもっと喜ばれるのか、相手の役にたつのかを考える。
「自分の仕事のその先に、どんな価値があるか」。それを頭においておくことで、何が求められているのかはおのずと見えてくる。結果を積み重ねていくことで、チャンスも、キャリアも、自然と引き寄せられてくるのだ。
「結果を出していれば、必ず誰かが見つけてくれる。それを初めて実感したのが、東京への異動だった」
前職の出版社でも営業の経験はあったが、まったくの異業界。エン・ジャパンでは、日々経営者相手に商談をしながら、求人原稿の取材をし記事制作もする日々。目まぐるしくかわる環境の中で、イチから学び実績を重ねた。
当時は福岡営業所立ち上げのタイミングだったこともあり、新規の取引先の開拓がなにより重要。柴本は誰よりも強いこだわりで、新規取引先の獲得に貢献した。結果、入社2年間で新規掲載社数のセールスレコードを2回ぬりかえるなど、高い実績を上げていった。
その実績が営業部長の目にとまり、東京本社へ異動の打診が来た。「自分の努力は絶対に無駄にならないんだ」。喜びとともに、成果を出し続ける意味を実感した。
異動先では、これまで経験していなかった大手企業への支援を担当。同じ営業という職種なのに、求められるスキルはこれまでとはまったく異なる。「ここで学べるものはすべて学びたい」。そんな思いで、またイチから必要な要素を吸収し積み重ねていった。
リーマンショックが起こった2008年。その影響から日本全体も不景気に陥る中、柴本は社内でも圧倒的No.1の売上をあげて全社MVPを獲得。
名実共にトップセールスとなり、高い評価と賞賛を集めていた柴本だが「このまま同じことを繰り返していて良いのか」という葛藤があった。
営業として求められる成果はだしているし、これ以上のレベルアップも期待できないと彼女は感じていた。
「これからのキャリアをどう描いていこう......」。そんな悩みの中、自分が興味のあるものを仕事にしようと考えた。そこで興味をもったのがコーチング。入社以来"面倒見がいい"と言われることが多く、教育に関わる仕事は向いているかもしれないという自覚があった。
「当時は本を読んだり、セミナーに参加したりコッソリ活動していて。そんな時、自分がすごく尊敬しているコーチング会社の社長から「ぜひ一緒に働きたい」と直接オファーが来た。新しいスキルを身につけるには転職が早いと思っていたところがあったから、正直これはチャンスだぞ!と思った」
しかし、柴本がエン・ジャパンを離れることはなかった。自分以上に自分のキャリアや将来を考えてくれる上司や同僚の存在。そして、まだこの会社で出来ることがある、求められているという実感が、彼女を引き止めたのだ。
常に未来をみすえて次のキャリアを考えることは良いことだ。しかし、単純に「環境を変えたい」「何かもっと好きなこと、得意なことがあるかも」という考えだと、結局どこにいっても変わることはできないと柴本は言う。
「働いている中で、会社と相性の良い時期・悪い時期はあって。周囲から求められ引き立てられることがなくなると、多くの人は漠然とでも転職を考えるようになると思う。
そんな時に向き合うべきは求められる結果を残せていない自分なのに、つい目が外に向いてしまう。そのままだと何も解決にはつながらないし、移った先でもまた同じ負のループにハマる」
それを打開するのは、求められ続ける人材であり続けること。そのために必要なのは、自分自身の成長を止めないことだ。
彼女は次のキャリアとして、企画職への異動を選んだ。それは、求められ続けるために伸ばすべき能力や活躍できるフィールドがそこにあったからだった。
きっかけは2人の先輩からの言葉。
「売上はすごいよ。でも、それって本当に柴本だけの実力なの?」
「個人に対しての提案力は高いと思う。でも、それをマスに対して発揮することはできる?」
瞬間的な成果ではなく、本当にこの経験が彼女自身の力になっているのか、伸ばすべき能力がまだあるのではないかと気づかされた。
「自分はもっとやれる」。出来ないことがあることに気づき、改めて自分の歩むべき先が見えてきた。
エン・ジャパンの企画職は、事業戦略を営業活動に落とし込む役割を担っている。そのため仕事内容は多岐にわたるが、正解がない仕事だけに常に社内外の動きを見ながら調整をかけていかなくてはならない。ステークホルダーの実現したい方向性を実現するためには何が最短なのか、トライ&エラーを繰り返した。
企画職としても高い評価を得て、キャリアに一区切りがきたタイミングで事業部長からまたしても声がかかった。打診先は新規事業の営業リーダー。
常に高い成果をだしていることだけではなく、「柴本とだったら目標を追っていける」「絶対成果をだしてくれる」。そう思わせる仕事への取り組み方と実績が、次のキャリアを引き寄せたのだ。
「正直5年のブランクもあるし、また営業をするとは思わなかった(笑)でも、結局どんな仕事も、求められ・喜ばれることがすべてのベースにあると思う。それを実現するために、職種もポジションも正直関係ないと私は思うんだ。期待して任せてくれる環境があるのは幸せなこと。自分が働き続ける意味がある限り、どこでも成果は出せるし、どんな活躍でもできると思う。
実際企画職から営業にうつって、今だからこそ "あの企画もっとよく出来たな" "この観点があればいけたんだ" という発見もある。働くということの根本は一緒だから、これまでの経験もこれからの経験も、すべてが繋がっていることを今改めて感じているよ。」
華やかなキャリアや圧倒的な成果。それを実現できているのも、常にその環境で求められる成果をだし続けているから。人から求められる人材となることで、キャリアは自然と開けてくるのだ。
[取材・文]木村翠
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