オーストリアの首都ウィーンで開かれている展覧会について、在オーストリア日本大使館が公認を10月30日付で取り消していたことをめぐり、同展を企画したキューレターのマルチェロ・ファラベゴリ氏は「(批判の声が上がった後)突然の公認取り消しとなり、非常に残念だ」とコメントを寄せた。出展していた会田誠さんは「傷を負ったのは日本」と反発している。
この展覧会は、日本とオーストリア国交150周年記念事業の一つで9月末から開かれていたが、作品群の内容について批判する声が一部で上がっていた。総理大臣をもじった作品や東京電力福島第一原発事故をテーマにした作品が問題視されたと見られる。
展覧会は「Japan Unlimited」という名前で、会田さんやスプツニ子!さんなど18アーティストの作品が展示されている。「表現の不自由展・その後」に参加していた芸術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」も参加している。
外務省中・東欧課の田口精一郎課長はハフポスト日本版の取材に対し、「日本、オーストリア国交150周年記念事業は、両国の友好関係と相互理解を150周年を機に盛り上げて行きましょう、というもの。今回の展示はその要件を満たすものではないという判断だった」と取り消し理由について解説する。
公認取り消しは、在オーストリア日本大使館が10月30日付で主催者に対して書面で通知した。取り消しのきっかけについて、担当課の関係者は「様々な形の問い合わせを受けた」と話す。
10月に入り、ツイッターで展示内容を「反日的だ」などと批判する人が増え、外務省に匿名や実名で批判が寄せられたという。また支援者から問い合わせを受けた国会議員も外務省に連絡をとった。自民党の大西宏幸衆院議員の事務所によると、大西議員の命を受けた秘書が10月末に電話で外務省に事実関係の照会をしたという。
外務省は、現地の職員が10月に改めて展示内容を確認し、取り消しを決めたとしている。
会田さんは公認取り消し後、Twitterで以下のように発信した。
展示会を見たある日本人は「社会批判の内容だが、欧州の感覚からするとマイルドなもの。日本政府の動きが過敏すぎて、関係者やキュレーターにわざわざ喧嘩を売っているように思える」と話す。
同展は、ウィーン拠点のキュレーター、マルチェロ・ファラベゴリ氏が企画し、150周年事業の公認を在オーストリア日本大使館に申請し許可された。公認を受けると公認ロゴマークが使用できる。日本からの補助金はない。外務省によると、同展は200以上ある150周年公認事業のうちの一つだったという。「Japan Unlimited」は公認が取り消されたものの継続している。
同展に参加し、現地に滞在しているアーティストの三田村光土里さんは「開始後1ヶ月あまり、大使館員も来場して見ていらっしゃいました。主催者側も突然文書が送られてきて、寝耳に水だったようです」と話している。
【UPDATE:2019/11/08/11:50】本展を企画したキュレーターのマルチェロ・ファラベゴリ氏は、ハフポスト日本版に対して以下のようにメールでコメントを寄せた。
「本展示は、社会的文脈に関わるアート活動である“Socially Engaged Art”です。政治社会批判的な作品でアートの限界に挑戦する。このことを通じて現代美術の役割を探るものだ、と本展示のコンセプトをこれまでも明確に述べてきました。在オーストリア日本大使館には6月中旬に、参加するアーティストのリストを渡していました。そのリストの中には、Chim↑Pomや会田誠、嶋田美子も含まれていました。
あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」ではChim↑Pomや嶋田美子の作品が物議を呼んでいましたが、こうした作家の作品を含む本展が(表現の不自由展が一時中止された8月以降に)開催されても、大使館職員は問題視せずにオープニングセレモニーにも参加してくれましたし、期間中も大使館員が来場していたのですが、開催から5週たった10月末に突然、公認取り消しの連絡が来たのです。非常に残念としかいいようがありません」