鎌倉〜藤沢間を走る人気ローカル線・江ノ島電鉄(以下、江ノ電)から依頼を受け、台湾との交流を促すショートムービーを制作した。
音楽は、楽曲を通して江ノ電とも縁の深い「空気公団」。
今回のために代表曲「旅をしませんか」に中国語の歌詞を加えて、セルフリメイクしていただいた。
キーをあげて明るい雰囲気になった山崎ゆかりさんの声と、ゲストボーカルとして参加した台湾人歌手、シ・インイン(史茵茵 Ying-ying Shin)さんの声が絶妙にマッチしていて、とても気持ちの良い女性ツインボーカルに仕上がっている。
それにしても、神奈川を走るローカル線の江ノ電が、どうして台湾との交流を促すPVをつくったのか。
実は江ノ電では、2年前から台湾のローカル線・平渓線と「乗車券交流」というキャンペーンを相互に行っており、江ノ電の1日乗車券「のりおりくん」の使用済みチケットを持っていくと、平渓線の1日乗車券と。平渓線の使用済み1日乗車券を持ってくると「のりおりくん」と、それぞれ交換してもらえることになっている(つい先日、期間が2016年3月末まで延長された)。
特に台湾からの利用客が予想以上に多く、ゴールデンウイーク前後には1万人を突破する見込みなのだという。
乗車券交流の発案者である、江ノ島電鉄観光企画部部長代理・中沢俊之氏の話し。
「はじめに台湾鉄路管理局から『観光鉄道のつながりでなにかできないか』と打診をいただいたことがきっかけで、この『乗車券交流』というアイディアを思いつきました。おそらく世界的にも前例のない施策だと思いますが、おかげさまで大変好評をいただいております。
実のところ内訳は台湾からのお客様が95%を占め、訪台はわずか5%に過ぎないというアンバランスな状態ではありますが、こうした取り組みを継続していくことがインバウンド(訪日外国人旅行者)誘客のさらなる拡大につながると考えています
「乗車券交流」とはいうものの乗車券の価格は江ノ電の方が高いため、平渓線からの利用客のほうがかなりお得になる(つまり江ノ電側の負担が大きい)のだが、江ノ電側にメリットがないわけではない。
というのも、ここ数年で江ノ電は台湾人観光客が非常に増えているからだ。
特に人気なのが漫画「スラムダンク」の舞台となったことで知られる鎌倉高校前駅の踏切で、ここでは平日の日中でも、アニメの舞台を背景に記念撮影をする若い台湾人観光客の姿で賑わっている。
この機会に彼らに一日乗車券を使ってもらい、江ノ電周辺の魅力を充分に味わってもらうことは、やがて何倍もの価値となって江ノ電に返ってくるに違いない。
江ノ電に限らず、ここ数年の日本人と台湾人は、まるで相思相愛の恋人のようだ。
日本の書店では、ハワイやオーストラリアなど人気観光地を凌ぐほどの台湾ガイド本が並び、特に女性向けの雑誌では頻繁に台湾特集が組まれている。
また台湾からの訪日外客数(観光客・商用客・その他客の合計)も増加の一途をたどっており、2012年には1,465,753人だったのが、2014年には2,829,821人とほぼ倍増。
同様に中国が1,425,100人から2,409,158人に増加しているが、総数では台湾が上回ってさえいる。人口比で考えた場合、台湾人の日本好きは突出していると言っていいだろう。
ちなみに韓国からの訪日外客数は2,042,775人から2,755,313人と微増にとどまっている。
(出典:日本政府観光局 ※2014年のデータは暫定値)
江ノ電の取り組みが一定の成果をあげたことが影響したのか、同様に日台の鉄道が提携するケースも増えている。
2014年には、千葉のローカル線・いすみ鉄道と集集線、山陽電車と宜蘭線がそれぞれ姉妹鉄道協定を結び、今年に入ってからは京浜急行電鉄と西武ホールディングスが、それぞれ台湾鉄路管理局との友好協定を結んだ。
また駅レベルでは、JR四国の松山駅と台鉄・松山駅、JR東日本の東京駅と台鉄・新竹駅が友好関係を結んでいる。
集集線、宜蘭線などは平渓線同様に、独特のローカルな雰囲気があり、鉄道写真マニアにとっても非常に魅力の高い路線といえるだろう。
ローカル線から拡がる日台の新しい友好の行方に期待したい。
江ノ電公式ページ「旅をしませんか 要一起去旅行嗎」