石破 茂 です。
国会は7月22日までの延長となりました。IR法案はなお国民の多数の理解を得るに至っておらず、参議院においてなお丁寧な説明が必要です。
幹事長在任中、IR(統合リゾート)の視察にシンガポールに行った際、「カジノ自体が目的ではなく、そこで得られた収益で国際展示場や国際会議場の利用料を下げ、誘致を促進することが目的」と力説され、その収支計算が精緻であったことと、不正行為や常習者対策が徹底して行われていたことが極めて印象的でした。
日本においてそれらの課題にどのように対応しているのか、それなりの対応は当然講じられているはずで、政府の更に誠実な説明が必要です。
加計学園の理事長が会見されたことは一歩前進でしたが、その目的は会見すること自体ではなく、この問題に対する国民の疑問を払拭し、納得を得ることにあったはずで、大阪での震災翌日、わずか2時間前の通告、岡山の記者クラブ対象という手法は、本当にその目的を達成するために最善であったかどうか、もっと工夫の余地があったように思われて残念でなりません。本来国家戦略特区の閣議決定に明示された条件を満たしてさえいれば当然に認可されるべきものであり、策をあれこれ弄する必要など無かったはずです。
米朝首脳会談から日が経過し、その構図が明らかになりつつあります。金正恩委員長にとって大切であったのは「核放棄のプロセスの間、米国は北朝鮮を攻撃しない」という「安全の保障」が、トランプ大統領は「朝鮮半島における米軍の駐留負担の軽減と北朝鮮の経済発展に対する米国の関与」が最も大事であったとすれば、両者の思惑は見事に一致していたように思われます。
そもそも「体制の保証」などどの国にも出来ることではありません。ロシアから分離独立したウクライナの体制を、核を放棄することを条件に、米・露・英、後には仏、中も共に保証した「ブダペスト覚書」がプーチン大統領によって反故にされたことを金委員長は熟知していたはずですし、おそらく彼はトランプ大統領に、北朝鮮のカジノ開発に米国企業が参加出来るようにする、というようなことも囁いたのではないでしょうか。
日本はこの後どのように対応すべきなのか。決して気を緩めることなく防衛力を着実かつ早急に整備することと併せて、日韓基本条約(1965年)、日朝平壌宣言(2002年)、ストックホルム合意(2014年)などを精緻に点検し、拉致問題も含めて国際法的な立場を今一度確認し、今後の交渉力を高めていかなくてはなりません。
更に、将来的に朝鮮国連軍が解消された場合、英国をはじめとする米国以外の10か国が在日米軍基地の使用することを可能とする「朝鮮国連軍地位協定」はその根拠を失うのであり、これは我が国の安全保障に重大な影響を与えることにもなりえます。
これらの問題の多くは政府が「憲法上行使不可能」とする集団的自衛権行使と密接に関わります。私自身は、何度も申し上げている通り、集団的自衛権行使の態様は憲法解釈から導き出されるものではなく、あくまで政策判断であり、行使の態様は安全保障基本法で制約し、我が国の外交・安全保障の選択の幅を広げることが論理必然であるとともに国益に適う、との立場ですが、今後この問題は我が国に重くのしかかってくるに違いありません。その場しのぎの対応は必ず将来に禍根を残すものと思い、なお努力を重ねてまいります。
先週の早稲田大学大隈塾、今週の東京・新代田の学生さんのシェアハウス「アオイエ」での講演とそれに続くディスカッションはとても内容の濃いもので、こちらも多くの刺激を受けました。政治が真剣に語れば応えてくれる方の多いことにとても安堵しています。
大阪の震災で犠牲になられた方、被災された方に哀悼の誠を捧げ、お見舞いを申し上げます。通学路に限らず、ブロック塀の点検と改修は急務です。
今週末土曜日から来週月曜日午前にかけては、兵庫県・宮城県・岩手県内各地において講演会や懇談会に臨みます。
梅雨の中休みのような今日の東京都心でした。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
(2018年6月22日「石破茂(いしばしげる)ブログ」より転載)