アーダーン氏は37歳だった2017年に、女性として当時世界最年少で国の指導者になり、1月に退任するまで約5年半ニュージーランドの首相を務めた。
その任期の締めくくりの場となった5日のスピーチで、アーダーン氏はマオリの伝統的なマント「コロワイ」を着用。
約35分にわたり、2019年のクライストチャーチのモスク銃乱射事件や ホワイト島の火山噴火、新型コロナ危機などを振り返った。
そして「自分は心配性であり、生き残るために劇的に変化する必要があると思っていたが、変わらなかった」と明かした。
「私は、以前と同じくらい繊細なまま、この場所を去ります。くよくよと考えがちで、大嫌いな党首討論の前日はほとんど食べることができませんでした。しかし、そんな人でも、ここにいることができます」
スピーチでは体外受精で子どもを授かるまでの苦労や、子育てをしながら首相の仕事をしたことについても振り返った。
「20代で議会選挙に立候補した時、子どもを持てなくなる道を選ぶことを恐れていました。私生活がある議員などいるでしょうか。でも私は運が良かった。この仕事で(夫の)クラークと出会いました。しかし子どもを持つことは、まったく別の挑戦でした」
「37歳の時、妊娠できない原因の一つにストレスがあると言われ、科学の助けを借りることにしました。しかし多くのカップルが経験するようにうまくいきませんでした」
「労働党の党首になったのは、体外受精の治療が失敗したばかりの時でした。母親になれない道を選んでしまったと思いました。しかし落ち込む代わりに、首相になるための仕事に取り組みました。それが、よい気分転換になったのだと思います」
「数カ月後に妊娠がわかり、とても驚きました。私が望む母親になるために、多くのサポートがあったことは疑いの余地がありません。官邸の人たちは私が読み聞かせをするために、家に帰れるようにしてくれました。私がいないときには様々な人たちが(娘の)ニーブの子育てを助けてくれました」
首相の仕事と子育ての両立を振り返り「できうる限り最高の母親であったという自信がある」と述べたアーダーン氏。
スピーチの最後で伝えたのは「心配性でも、繊細でも、母親でもオタクでも、リーダーになれる」というメッセージだった。
「私の首相としての時間を決定づけるものが何だったか私には分かりません。ただ、あることを証明できていたらと願っています」
「心配性でも、繊細でも、優しくても、気持ちを正直に出す人でも、母親でも、そうでなくても、元モルモン教徒であろうがなかろうが、そしてオタクでも泣き虫でも、ハグが好きな人であっても、その全部ひっくるめた人でも、あなたはこうした場所にいることができます。そしてリーダーになることができます。私のように」
込み上げてきた感情で、スピーチの最後では少し声を震わせた前首相を、集まった議員らはスタンディングオベーションで讃えた。
5年半の任期中、様々な困難に直面しながらも、国民に直接語りかけ寄り添う姿勢が高く評価されたアーダーン氏。
今後はオンライン上のテロリストや過激主義的なコンテンツを廃絶するための取り組み「クライストチャーチ・コール」の特使を務めることが決まっている。