フランスで最も古く「漫画界のカンヌ」と呼ばれる第46回アングレーム国際漫画祭は1月23日、漫画家の高橋留美子さんがグランプリを受賞したと発表した。
この賞は、世界の漫画家1672人が投票で決定する。漫画祭の主催者は高橋さんについて「日本は、違いを受け入れない(出るくいは打たれる)社会だ。そのなかで、高橋留美子はアウトサイダーや変人を前面に押し出し、彼らにもチャンスがあることを示そうとこだわっていた」と評価。
彼女から描き出されるヒーローやキャラクターたちは、時にコメディを装いつつ、極めて進歩主義的な作品に仕上がっているとした。
また、当時は珍しかった少年誌での女性漫画家という立場についても「彼女は、マンガの慣例を超えていった最初の人物」と指摘した。
高橋先生すごすぎるっちゃ。卒論と同時並行でラムちゃんを描く
1978年、少年サンデーの短期集中連載「勝手なやつら」でデビュー。同年に「うる星やつら」の連載が始まった。「~だっちゃ」が口グセの宇宙人・ラムちゃんの破天荒ぶりが少年少女の心を鷲掴みにした。
大学時代に通っていた「小池一夫劇画村塾」では、作家の小池一夫さんが「君はプロになる」と舌を巻いたほどの才能。
卒論を仕上げて大学を出た後、本格的にマンガ業にのめり込んでいった。格闘コメディ「らんま1/2」や「犬夜叉」など、少年漫画史に燦然と輝く作品を生み出し続ける一方、未亡人と大学生の恋愛感情の機微を面白おかしく映し出した「めぞん一刻」のほか、サスペンス要素を盛り込んだ「人魚シリーズ」など、多岐にわたるジャンルを開拓し続けている。
止まらない高橋先生
漫画に対する真摯な姿勢は、多くの編集者の間でも語り継がれている。
週刊ヤングサンデーで不定期連載された、根性なしのボクサーが主人公の「1ポンドの福音」で3代目の担当編集を務めた八巻和弘さんは、少年サンデーSのコミックス2億冊突破記念号(2017年5/1号)で「高橋先生は漫画を面白くするためには、絶対に諦めませんし、出口が見つかるまで粘り続けます」とつづっている。
連載終了後、いとまなく新作が生み出され、それが超人気シリーズになっていくという40年余りを過ごし、累計発行部数は1995年に1億冊を突破、2017年には2億冊を突破した。
時代時代の少年誌愛読層のメインストリームであり続け、圧倒的な構成力と読みやすさを追求した漫画はどんな読者も拒まず取り込んでいく。キャラクターひとりひとりが個性的で、ときにそのセリフは名シーンを作り出していった。
もはや休み知らずと言っても過言ではない高橋先生。2017年に「境界のRINNE」の連載が終わったが、2019年春にまた新連載が始まる予定だ。