イスラエルのエルサレムやテルアビブなどで9月1日、武装勢力ハマスに連れ去られた人質6人の遺体がガザ地区で見つかったことを受けて、即時停戦を求めるデモが行われた。
デモは2023年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃して以来、最大規模と見られており、参加者はハマスとの停戦交渉に合意して残りの人質を解放するようイスラエル政府に求めている。
約30万人が参加したとされるテルアビブでは、人質の家族らが6つの棺を担いで行進。参加者が幹線道路を封鎖して火をつけ、ネタニヤフ首相に停戦を求めた。
テルアビブに住むシュロミト・ハコヘンさんは、「政府は人質の命ではなく、自らの保身のための決断をしている。やめろと伝える必要がある」とAP通信に述べている。
イスラエル最大の労働組合「Histadrut」は政権に圧力をかけるために、9月2日にゼネストの実施を呼びかけており、銀行や飲食店などの休業や、空港などでの交通の乱れが予測されている。
ハーシュ・ゴールドバーグ=ポリーンさん(23歳)、エデン・イェルシャルミさん(24歳)、カルメル・ガットさん(40歳)、アレクサンダー・ロバノフさん(33歳)、アルモグ・サルシさん(27歳)、オリ・ダニーノ(25歳)の6人の遺体は、8月31日にパレスチナ・ガザ地区で見つかった。
このうちゴールドバーグ=ポリーンさんは米カリフォルニア州生まれのイスラエル系アメリカ人で、両親は8月にイリノイ州で開催された民主党全国党大会で登壇して「どうか生き延びて」と呼びかけ、1日も早い人質解放を求めていた。
6人の遺体はガザ地区の南部ラファの地下トンネルで見つかり、検視をしたイスラエル当局は「48〜72時間前にハマスのテロリストに至近距離から何発も撃たれて殺害された」と発表した。
ネタニヤフ首相はハマスを非難し、「人質を殺害する者は、停戦合意を望んでいない」と述べている。しかしデモ参加者らの怒りは、停戦交渉を成立させていないネタニヤフ首相に向かっている。
AP通信によると、ハマス側は戦争の終結とイスラエル軍のガザからの撤退、パレスチナ人の囚人解放と引き換えに、人質解放に合意したとされる。
一方、ネタニヤフ首相は「フィラデルフィア回廊」と呼ばれる、ガザとエジプトの境界沿いのと戦略上の重要地帯などからの軍の撤退を拒否しており、停戦交渉を長引かせてきた。
また、ネタニヤフ首相に対しては、戦争が終結すればハマス襲撃などでの自らの責任が追及されるため、人質の命よりも自分の利益を優先させているという批判も起きている。
2023年10月7日のハマスの襲撃では、イスラエルで1200人以上が殺害され、200人以上が人質として連れ去れた。その後人質の一部は解放されたものの、今も100人以上がガザに捕えられている。ガザ地区ではイスラエルの攻撃でこれまでに4万人以上のパレスチナ人が亡くなっている。