官房長官会見での質問をめぐり、首相官邸側から問題視されている東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者を支援しようとインターネット上で署名活動をした東京都の中学2年の女子生徒(14)が、Twitterなどで誹謗中傷される事態になっている。
「生徒は実在するのか」という意見までみられた。
中学生は3月4日、母親とともに改めてハフポストの直接取材に応じ、「(私は)ちゃんといます。信じてくれない人がたくさんいて悲しいです。子どもが何か意見しちゃいけないんだという偏見が(日本には)すごくあると感じました」と語った。
一方で、こうした状況を見かねた弁護士らから支援の動きも広がっている。
女子生徒は、菅義偉官房長官の記者会見で望月記者が質問中、首相官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と言うなど、妨害とも受け取れる行為を繰り返す様子をテレビやネットで見て心を痛めた。
女子生徒は望月記者に対する官邸側の行為が「いじめ」と感じ、署名集めを決意。ネット上の署名活動サイト「Change.org」で、「特定の記者の質問を制限する言論統制をしないで下さい」などとするキャンペーンを2月5日、仮名で始めた。
活動を終えた2月末までに、1万7000人超の賛同者を集めた。
一方、女子生徒の活動をハフポストが報じたところ、その直後から、生徒のTwitterアカウントなどに対し、女子生徒の存在や母親によるなりすましを疑ったり、誹謗中傷したりするような発言が殺到、「炎上」状態となっている。
こうした状況について、ハフポストは生徒と母親に心境を聞いた。2人とのやり取りは以下の通り。
──署名活動をめぐり、Twitterなどでは批判的なコメントが相次いでいます。
生徒 ネットでひどいことを言われて悔しいです。根拠がないネットの言葉を信じ込んでしまう人が多いんだな、と思いました。
母親 驚いています。何も悪いことをしてないないのに。ネットでの攻撃はまるで「黙れ」と言われているようです。
──あなたが実は存在しないとか、お母さんがなりすましているなど、疑う人も多いです。
生徒 ちゃんといます。信じてくれない人がたくさんいて悲しいです。子どもが何か意見しちゃいけないんだという偏見が(日本には)すごくあると感じました。
母親 私が娘になりすましているとか、娘にやらせているとかの見方もありますが、まったく違います。いったいなんの根拠があるんでしょうか。あくまで娘が自主的にやったことを影ながら応援した、というだけです。
──署名を集めたサイトChange.orgの規約には「利用年齢は16歳以上」と書かれており、これに違反しているとの声も上がっています。
母親 規約には同時に、16歳未満の子どもはアカウントの作成を親に頼むことを薦めます、と書いてあります。
だから私が手伝いましたし、Change.org側にはアカウント設定時、年齢が「14歳」であることを申告しています。
その後、Change.org側からは規約違反だと警告は頂いていませんし、成功という形で署名集めを終えることもできました。
──お母さんが娘さんを「操って署名集めをやらせた」と疑う人もいます。
母親 実は娘は今回、誹謗中傷が寄せられたことであまり話したくないようです。これ以上は無理をさせたくないので私が話します。
繰り返しになりますが、私がやらせたわけではなく、あくまで娘が自分でやろうと決めました。
確かにアカウント作成やページの構築は手伝いました。それは娘が未成年であり、ネット上で攻撃されないよう、こうした形で関与するのは親として当たり前です。
子どもが政治的なことに関心を持つわけがない、と疑う人もいますよね。それは違います。
あの官房長官会見を子どもはネットやテレビのニュースで見て、自ら「おかしい」と感じたんです。
うちの娘だけではありません。学校の子ども同士でも「なんか変だよね」「怖いね」「大人って平気でいじめるんだ」と話題になっているようです。
──望月記者の質問の仕方にそもそも問題がある、という声もあります。
母親 確かに望月さんにも未熟な面があったかもしれないけど、それでも国政の代表者である官房長官は一般人とは違います。丁寧に説明すべきではないでしょうか。
まして排除したり、自分の都合のいい質問にしか答えないというスタンスは違うと思います。
それに、権力という大きな存在が一記者である望月さんに対してあたかも圧力をかけているような状態なのに、「望月さんの方が悪いんだ」というのは、娘が感じてる通り、いじめの論理に似ている気がします。
いじめられている方に原因があって悪いんだ、と。娘は小学校のころ、いじめられている子をかばっていじめられた経験があります。
いじめはよくないと言ったらいじめられる。娘が望月さんと自分を重ねたのはよくわかります。「いじめはよくない」と言えない社会は怖いです。
──「不勉強な子どもが主張するな」などと批判する投稿もありました。
母親 子どもと言えども、社会に対して意見を表明する自由はあります。日本も批准している「子どもの権利条約」でも認められています。
子どもが世の中の出来事について「おかしい」と思い、今回のように何らかの行動に移すことに問題はなく、批判は的外れです。
──集めた署名は内閣記者会にも提出するとのことですが、報道機関に対して思うところはありますか。
母親 頑張って欲しいです。官邸の行為はある意味、記者間の対立をあおっているような気もします。
それに負けて受け入れてしまっては、ジャーナリズムの自由がせばめられます。
ジャーナリストが自由な質問を制限されるようでは、やがて一般の人に対しても言論統制される世の中になっていくのではないでしょうか。
──お母様にうかがいます。娘さんの今回の行動についてどう思いますか。
母親 中学生としてできることは最大限、頑張ったと思います。
署名集めが終わったので、中学生として勉強したりする日常に戻ります。そして、私は母親として子どもを守っていきます。
子どもが頑張る段階は終わり、今度は大人たちが頑張る番です。
確かにネットでの攻撃が凄まじいですが、一方で支援の声もいただいています。
攻撃的なアカウントは「相手にしない方がいい」とか、「子どもの目に触れさせない方がいい」などの一般的なアドバイスだけでなく、弁護士さんたちからも法的な助言をもらっています。心強いです。
子どもも相当参っていて、Twitterのアカウント消そうか、鍵をかけようか迷っているようです。
でも、そんなことしたらいわれなき攻撃に屈したことになるんじゃないかとも思います。この後、子どもと相談したいと思います。
「法的措置を検討」
中学生は取材後の3月4日深夜、Twitterのダイレクトメッセージで筆者に対し、こう述べた。
「なんだか上手いこと言えなかったんですが、今の気持ちをツイしました。アカウントも消さず、発信していきます。イジメはアカン。イジメはアカンという人をいじめるのは、もっとアカンと思います」
2人は悪質な誹謗中傷をするTwitterのユーザーらや一部のサイトに対し、法的措置を検討しているという。