憲法第7条による解散は努めて抑制的であるべきだと考えていますが...

石破 茂 です。

突然の解散となったため、どの党も公約が急拵えで論理一貫性に欠けるきらいがあるのは否めませんし、公認候補自身も所属政党の公約をどこまで理解して有権者に訴えているのか、怪しいと言わざるを得ません。

私自身は憲法第7条による解散は努めて抑制的であるべきだと考えていますが、仮にこれを行う場合には政策を可能な限り詰めて議論した後に成案を得、候補者たちがそれをよく理解した上で論点を整理して提示し、有権者に選択を求めることが、政策を選択する選挙の在るべき姿だと思っています。

「それは理想論であり、現実の政治はそんなものではない」とのご批判が容易に予想されますが、そのようなことを言っていてはいつまで経っても日本の政治はよくなりません。政党が理想を放棄してどうするのでしょうか。

憲法第9条についても、

*国家の独立を守る組織が「軍」である

*国家の独立とは、領土・国民・統治機構という国家主権の三要素を守ることを指すのであり、この三つは何があっても外国に侵されてはならない

*「軍」は行政組織と完全な組織性・同一性を本来有しないが故に、文民統制の概念が必要となる

*「文民統制」とは、立法・司法・行政の三権により行われるべきものである

などという基本的なことを捨象して、「自衛隊を憲法に書き込む」対「9条を守る」的な議論をしていても積極的な意味はないものと思います。

「軍」という言葉を忌避するあまり、「国家の独立」や「政軍関係のあり方」という物事の本質を直視しないことはあまりにも危険なことです。

北朝鮮に対する「圧力」を語るにあたっては、この問題を外交的に解決することを可能とするための抑止力の強化が不可欠です。拡大抑止の信頼性とミサイル防衛の実効性を向上させ、国民保護の体制を整備することが必要なのはかねてから申し上げてきたとおりです。北朝鮮にのみ目を奪われることなく、中国やロシアに対する抑止力を確保するために、グレーゾーン事態対処の明確化とさらなる統合運用能力、情報収集能力の整備は急務です。

製造業に限らず、サービス業を含む多くの産業において、「同じ商品を、安く、沢山、大勢の人で、男性の長時間労働をベースとして提供する」という発展途上国型の産業モデルから転換できていないことが、日本経済の最大の問題点だと考えています(私の若い頃には「24時間戦えますか」というドリンク剤のCMソングが流行ったものでした)。

日本国の在り方を「高度で多様な価値観に適合した」「高付加価値の」「少量多品種の商品を」「男女の適切な役割分担による生産性の高い労働力で」提供するという、人口オーナス期に合致した形に早急に転換するためにこそ政治のリーダーシップが発揮されなくてはならないのであり、急速に深刻の度を増す人口減少、地方の衰退と東京一極集中、医療や介護・子育てなどの課題も、この文脈においてもっと語られるべきです。消費税の増税や使途の変更だけが論点なのではありません。

一昨日は三鷹と調布、昨日は水戸と、連日街頭やハコモノでの演説を行っていますが、有権者が具体的な政策を求めていることを痛切に感じますし、ひたすら対立を煽り、劇場型を演出する手法には辟易しているように思われます。

国家の直面する課題を語り、具体的な政策と国民政党・自民党の在るべき姿を提示し、主権者たる国民の審判を仰ぎたいと思います。

国民の審判が降る前に選挙後の政権の枠組みなどを語ることは、主権者に対して礼を失する行為以外の何物でもありません。

閏月がある関係で、今年の中秋の名月は一昨日、満月は今夜という、何だかよくわからないことになっています。

昨日の常磐線の車窓から見た月は誠に見事でしたが、天空と下界との有り様の異なりを思ったことでした。

朝夕は寒さを感じる頃となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

(2017年10月6日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)

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