イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官が米軍に殺害され、イランが報復を宣言するなど、米イランの対立が深まっている。
アメリカのトランプ大統領は「米国が攻撃された場合はイランの52カ所を標的にする」と表明し、標的には「イラン文化にとって重要な場所」も含まれると示唆した。Twitterでは、文化財への攻撃を懸念する声が広がり、ハッシュタグ「#IranianCulturalSites(イランの文化遺産)」をつけた投稿が相次いだ。
「イランの52カ所を標的にした」 トランプ大統領が宣言
米国防総省は1月2日夜、トランプ大統領による指示で、「海外に駐留する米国人を守るための断固たる自衛行動」としてソレイマニ氏を殺害したと発表した。
ソレイマニ氏はイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」を指揮した人物で、米国からはテロリストと見なされていたが、イラン国内では反米の保守強硬派の代表格として英雄視されていた。
米国防総省は、ソレイマニ氏がアメリカの外交官や軍人を攻撃する計画を「積極的に展開」していたと指摘。12月末にイラクの首都バグダッドで起きたアメリカ大使館襲撃事件も承認したとして、殺害の正当性を強調した。
イランの最高指導者ハメネイ師は強い反発を示しており、米国に対する「厳しい報復」を宣言した。イラン最高指導者の軍事顧問を務めるホセイン・デフガン氏は、CNNの単独インタビューで、米国の軍事拠点に「直接的な報復」をとると話したという。
《ソレイマニ氏の殺害後、星条旗の画像をTwitterに投稿したトランプ大統領》
緊張が高まる中、トランプ大統領は4日、「イランが米国人や米国の資産を攻撃するならば、イランの52カ所を標的にする」とツイッターに投稿。「迅速かつ激しく攻撃する」とも述べ、報復宣言したイラン側を牽制した。
「52カ所」とした理由については、過去に人質となった米国人の数と説明しており、1979年にイランで発生した米大使館人質事件を指しているとみられる。
標的には「イランやイラン文化にとってハイレベルで重要な場所」も含んでいるとし、「アメリカをこれ以上脅すな!」と投稿した。
「イランの文化遺産」写真投稿が相次ぐ
トランプ氏の発言は、歴史的建造物など文化価値の高い施設も攻撃対象とすることを示唆している。しかし、武力紛争における文化財への攻撃は米国も加盟するジュネーブ条約で明確に禁止されている。
Twitterでは、「#IranianCulturalSites(イランの文化遺産)」というハッシュタグを付けてイラン国内のモスクや遺跡などの写真を投稿する人が相次ぎ、トランプ氏の発言に反発する声が広がった。
ブルームバーグによると、トランプ氏の発言について質問を受けたポンペオ米国務長官は、対イラン行動は「合法的」に講じられると強調した。