2度目の弾劾裁判で、無罪評決が下されたトランプ前大統領。しかしまだ前途は多難のようだ。
トランプ氏に対しては、現在複数の刑事事件と民事事件での捜査・調査が進められている。
連邦議事堂での暴動
アメリカの上院は2月13日、5人が死亡した連邦議事堂での暴動の責任を問う弾劾裁判で、トランプ氏に無罪評決を下した。
弾劾裁判では、ミッチ・マコーネル上院院内総務を含む43人の共和党議員がトランプ氏を無罪と判断。有罪評決に必要な3分の2に達しなかった。
その一方でマコーネル氏は裁判後に「トランプ氏には暴動の責任があり、大統領でなくなった後に起訴される可能性がある」と述べた(共和党議員たちは「上院にはすでに大統領ではない人物を有罪にする権限がない」という理由で無罪判断をした)。
実際、ワシントンD.C.の検事局が暴動でのトランプ氏の法的な責任を調べていると報じられている。
またこれとは別に、暴動で負傷した人や死亡した人の家族がトランプ氏を訴える可能性もある。
さらに民主党のナンシー・ペロシ下院議長は15日、独立委員会を設立して暴動を調査すると発表した。独立委員会は、2001年に起きた同時多発テロを検証するために設けられた委員会をモデルにする。
トランプ氏に関連する捜査や訴訟は、連邦議事堂の暴動だけではない。
同氏はすでに、1990年代にトランプ氏からレイプされたと告発したコラムニストのE・ジーン・キャロル氏から、名誉毀損で訴えられている。
その他にも、ジョージア州とニューヨーク州の少なくとも2州で、刑事・民事両方の捜査や調査が行われている。
ジョージア州
ジョージア州フルトン郡のファニ・ウィリス地方検事は2月10日、トランプ氏が、2020年の大統領選挙に介入しようとした件について検察が捜査をしていると発表した。
捜査には、トランプ氏が同州のブラッド・ラフェンスパーガー州務長官に対して、票を不正集計するよう電話で求めた件も含まれている。
トランプ氏は1月、バイデン氏の勝利を覆すだけの票を“見つける”ようにラフェンスパーガー氏に求めた。協力しなければ、ラフェンスパーガー氏が刑事訴追される可能性があると脅すような発言もしている。
ウィリス氏の捜査は、共和党のリンジー・グラハム上院議員がラフェンスパーガー氏にかけた電話にも及んでいる。
グラハム氏は2020年11月に、一定の郵便による投票を破棄するようラフェンスパーガー氏に求めた。さらにトランプ氏の弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏も捜査対象になっているという。
ラフェンスパーガー氏を含むジョージア州当局者に送った書簡で、ウィリス氏は関書書類を全て保存するように指示している。
捜査の内容は、共謀罪や脅迫罪、選挙不正をするよう求めた教唆罪に及ぶ。重罪で起訴されれば、少なくとも1年の禁固刑の可能性があるという。
ニューヨーク州
ニューヨーク州では、レティシア・ジェームス司法長官がトランプ・オーガニゼーションに対する民事訴訟の調査を進めている。
調査は銀行融資と税制優遇を受ける目的で、同オーガニゼーションが虚偽の資産申告をした疑惑に関するもの。ニューヨーク州北部の不動産とロサンゼルス郊外のゴルフクラブが問題視されている。
ニューヨーク州の裁判所は1月に、調査に必要な書類を提出するようトランプ・オーガニゼーションに求めており、ロイターによると同オーガニゼーションは裁判所の決定に従った。
調査によって新たな犯罪の可能性が見つかった場合には、刑事捜査になる可能性もあるという。
ジェームス氏は「マンハッタンのサイラス・ヴァンス地方検事による捜査と類似した刑事捜査が行われる可能性もあります」とニュースチャンネルのNY1に述べている。
ヴァンス氏が進めているのは、トランプ・オーガニゼーションの保険詐欺と税金詐欺の疑惑で対する刑事捜査だ。
ヴァンス氏はトランプ氏の納税記録の開示を求めており、連邦最高裁判所が数週間以内に、トランプ氏が納税記録を提出すべきかどうかについての判断を示すと考えられている。
ジョージア州やニューヨーク州での捜査は、トランプ氏にとって脅威となる可能性がある。
「私がトランプ氏や彼の弁護士なら、ニューヨーク当局とジョージア当局の捜査を心配するでしょう。彼はかなり危機的な状況にあります」とニューヨーク大学ロースクールのライアン・グッドマン氏は15日にCNNに語った。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました(翻訳:Satoko Yasuda @satokoysd)。