アメリカのトランプ大統領が、12月6日にもエルサレムをイスラエルの「首都」と認める方針だと、アメリカの複数のメディアが報じた。これに対し、パレスチナ側が「再び民衆蜂起を呼びかける」と警告するなど、反発を強めている。
■これまでの経緯は?
エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの聖地とされており、この地をめぐる問題は、世界で最も解決が困難だとされている。
イスラエルはこの都市を首都と定めているが、国際的には承認されていない。パレスチナもエルサレムを将来の独立国家の首都だと主張している。
アメリカの歴代政権や国際社会は、エルサレムについて、「イスラエルとパレスチナの和平交渉で決めるべきだ」としており、日米を含む多くの国はテルアビブに大使館を置いている。
ところが、トランプ氏は大統領選でイスラエル寄りの姿勢を鮮明に打ち出し、米大使館をエルサレムに移転すると、公約に掲げていた。
しかし、トランプ氏は大使館移転を先延ばしにしてきた。
大統領に就任した翌月の2017年2月、トランプ氏は大使館のエルサレム移転について、まだ決め兼ねているしている状態だとコメント。6月には、移転を半年、先送りすると決定した。理由については、イスラエルとパレスチナの和平交渉を、「成功させる機会を最大限にするため」と説明した。
■トランプ氏がエルサレムを首都と認める意向だと報じられる
12月1日、ロイター通信など複数メディアが、トランプ氏がエルサレムを首都と認める一方、大使館の移転は、決定を先送りする見通しだと報じた。
これに対し、パレスチナのパレスチナのアッバス議長は報道官を通じ、「これまでの和平プロセスが崩壊する。大使館移転と同レベルの危険をはらんでおり、地域を不安定にさせる」とコメント。「世界が代償を払うことになる」などと懸念を示した。
また、ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスは2日、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認めたりすれば、「インティファーダ」と呼ばれる民衆蜂起を、パレスチナの人たちに呼びかけると警告した。
インティファーダとはイスラエルの占領地においてパレスチナ住民により組織的に展開された占領支配に抵抗する運動。1987年(第1次)と2000年の2回(第2次)に起きている。
第1次インティファーダでは、ガザでイスラエル人の乗ったトラックがパレスチナ人労働者の乗ったバンと衝突し、4人の死者を出したのをきっかけとして広がった。
パレスチナ側は子供から大人まで、主に投石や道路遮断などでイスラエルへの抵抗を示したのに対し、イスラエル側は武力的な鎮圧を強行。死者は 1500人,逮捕者は延べ 5万人をこえ,国際的にも大きな反響を呼んだ。
第2次インティファーダはイスラエル右派によるエルサレム聖域への強行立ち入りに反発したパレスチナ市民の間から起きた。迫撃砲や手製のロケット弾などが使われた他、自爆テロなどにより激しい暴力の応酬に発展。ニューズウィークによると、パレスチナ側5000人以上、イスラエル側に1000人以上の死者が出た。