「どうしたら、情報を効率よく処理出来ますか」

私が彼女に言ったのは…。

「どうしたら、情報を効率よく処理出来ますか」

山本佳奈医師から質問を受けた。

彼女は、唯一の常勤の内科医が退職した大町病院(福島県南相馬市)をサポートするため、9月に南相馬市立総合病院から出向した。現在、約20人の入院患者を担当しながら、週に8コマの外来をこなしている。

診療のための勉強は勿論、私どものチームの一員として、多くの研究活動に参加している。彼女の日常は多忙だ。

私のチームには約60名が参加しているが、私はチームを運営する上で、情報共有を重視している。毎日、多くの情報がメール、フェースブックメッセンジャー、LINEなどで配信される。

チーム全体に送られるものもあれば、プロジェクト毎の連絡事項まで、取り扱う情報は雑多だ。

私が山本医師に言ったのは、「スマホを酷使し、外来などの隙間時間に処理すること」だ。

メールはGメールを使い、スマホアプリである「inbox」で処理すればいい。

グループ内のメーリングリストでのやりとりの多くは、山本医師に直接は関係がない。CCやBCCで送られるメールも同様だ。ただ、彼女が私たちのグループの一員である以上、全体の流れを把握しておくことは重要だ。

山本医師は貧血を研究している。昨年4月には『貧血大国・日本 放置されてきた国民病の原因と対策』(光文社新書)を出版した。彼女は、Googleアラートに「貧血」などのキーワードを登録している。「inbox」を使えば、メール一覧画面で、その中味が表示される。画像ファイルや動画サイトをリンクしている場合も同様だ。メールを開けずとも概要が理解できる。自分と無関係なら、右スワイプしてアーカイブすればいい。

もし、処理が必要なメールが来たら、どうすればいいだろう。私はエバーノートに転送することにしている。

エバーノートでは、プラス版やプレミアム版の利用者に対して、「エバーノート転送用メールアドレス」がデフォルトで準備されている。「アカウント」、「設定」とクリックするとわかるようになっている。

こうすることで、私はGメールをフロー情報の処理、エバーノートをストック情報の処理に使い分けている。

アイデアやメモ書きを保管するのもエバーノートだ。スマホアプリの「FastEver」を利用すれば、入力をそのままエバーノートに転送できる。音声入力を使いこなせば、移動中に思いついたアイデアを、かなりの長文でもメモできる。また、画像や写真は「FE Snap」を使えばいい。こうやって、自分独自のデータベースができる。Gメールと違い、広告やメールアラート、メーリングリスト、さらに単なる「報連相」のメールなど雑音は含まれない。

ただ、普段、もっとも利用しているアプリは、フェースブックメッセンジャーだ。なによりも操作性がいい。特に、スマホで読んだニュースや論文などをスクリーンショットで送れるのは便利だ。

情報共有グループの作成が容易で、かつ誰が既読かわかる。グループ内の「回覧板」として機能する。

ところが、フェースブックメッセンジャーにも問題はある。それは検索機能だ。現バージョンでは、過去のやりとりを検索できない。このため、データベースとしては使えない。写真、画像、有用なサイトをシェアするフロー情報専用のアプリである。

若手医師は、膨大な情報を処理しなければならないし、膨大な情報に触れなければ、自らの頭は整理されない。

一方、落ち着いて本を読むことも重要だ。世間では二者択一の議論が横行しているが、そんなことはない。

むしろ、じっくりと本を読み、自ら考える時間を作るためには、日常情報は、その場で、出来るだけ短時間で処理すべきだ。そのためにスマホは便利だ。若手医師の成長には、スマホを使いこなせるか、否かにかかっている。

*本稿は『医療タイムス』の連載に加筆したものです。

注目記事