1回飲めば効果があり、細胞内でウイルスが増えないような仕組みのインフルエンザ新薬として、注目を浴びている「ゾフルーザ」。
だが、国立感染症研究所は1月24日、ゾフルーザを服用した患者から、薬剤に対する耐性を持ったウイルスが検出されたと発表した。
横浜の小学校で集団感染、耐性ウイルスが見つかる
2018年12月、横浜市の2つの小学校で、インフルエンザの集団感染があった。
国立感染症研究所によると、このうち6~7歳の4人の患者からウイルスを分離。4人のうち、2人は調査の3日前にゾフルーザを飲んでおり、1人は調査後に服用した。また、1人は2日前に「タミフル」(薬名:オセルタミビル)を服用していた。
それぞれの患者からは、H3N2亜型(A型インフルエンザ)のインフルエンザウイルスが検出された。
この4人から採ったウイルスについて遺伝子解析をしたところ、ゾフルーザを飲んでいた患者から分離されたものは耐性を持つ変異があったことが分かった。
このウイルスは、変異していないものに比べて76~120倍ゾフルーザに対して感受性が低くなった(効きにくくなった)。
一方で、タミフルを投与された患者と、ゾフルーザを飲む前だった患者から検出されたウイルスには、耐性変異は見られなかった。
ただ、変異したウイルスは遺伝子配列が異なり、人同士での感染ではなく、ゾフルーザを服用したことでその患者の体内で増殖したとみられる。
ゾフルーザとは?
これまで使われてきたタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなどの治療薬は、細胞内で増えたウイルスが細胞から外に出るプロセスをはばむことで、周りの細胞に感染が広がっていくのを防ぐタイプだった。
一方、ゾフルーザは、細胞内でのウイルスそのものが増えないようにする。
ゾフルーザは体重が10kg以上であれば服用でき、錠剤を1回飲むだけということで手軽さが話題を呼んでいた。
耐性変異ウイルスのリスクは?臨床試験でも変異が認められていた
ゾフルーザは、ほかのインフルエンザ治療薬に比べ、臨床試験の段階で変異ウイルスが検出される割合が高くなっている。
ゾフルーザは、2016年から2017年にかけ、12~64歳のインフルエンザ患者約1440人を対象にした最終段階の臨床試験(第三相試験)で、薬の効果や副作用が検査された。
そのなかでも、耐性変異ウイルスの検出率については、12歳以上で9.7%、12歳未満では23.4%あった。また、耐性変異ウイルスが検出された患者は、病気の期間が延長すると報告されている。
一方で、約2000人を対象にしたタミフルの臨床試験の累計データでは、耐性変異ウイルスの検出率は成人患者で0.32%、小児患者では4.1%だった。
開発した塩野義製薬広報部は、ハフポスト日本版の取材に対し「国立感染症研究所がどのような解析手法で結果を出したのか分からないので、コメントできない。臨床試験では変異したウイルスが確認されたが、病原性が高くなるかやヒトからヒトに感染伝播するかは研究中で分かっていない。今シーズンのデータを集め、準備が整い次第発表する」と答えた。