1月に入り爆発的に感染者数が増えているインフルエンザ。
熱の出はじめや、病院が閉まっている時間などに、つい「家にある市販の解熱剤で対処できないか」と思うこともあるかもしれない。
ただ、インフルエンザは普通の風邪と違い、服薬に注意が必要だ。薬によっては、インフルエンザ脳症などの合併症を重篤化させる可能性がある。
インフルエンザ脳症とは?けいれんが出たらすぐに受診を
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザに伴って発症する意識障害などを指す。長野県では、1月13日に男子児童がインフルエンザによる脳症で死亡した。
けいれんや異常行動を起こす場合もあり、そうした症状が出たらすぐにでも医療機関に受診する必要がある。
主に乳幼児にみられるが、成人でも発症例はある。インフルエンザは年間50万~100万人がかかるとされ、このうち、100~300人が重篤な合併症である脳炎・脳症になるとされる。
子どもの場合、インフルエンザ脳炎・脳症の死亡率は30%前後、4分の1の患者には運動麻痺や失語症などの後遺症が残るという。
脳症を悪化させる危険が。絶対に使ってはいけない解熱剤
厚生労働省によると、1月7日~1月13日までの1週間で、全国約5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザ患者は、1医療機関当たり平均38.54人。その前週の16.30人と比べ、2倍以上に増えている。
インフルエンザか判断がつかないが、高熱が出て苦しいときに手を出したくなるのが解熱剤。
だが、厚労省は2000年からジクロフェナクナトリウム(市販名:ボルタレンなど)を含む解熱剤を飲んでしまうと、インフルエンザ脳症を悪化させ、死亡率を上げてしまう可能性があると警告している。
同年に発表された厚労省の研究班のデータでは、インフルエンザ脳炎・脳症の患者の中で、ジクロフェナクナトリウムを使用していた患者は、12例中7例が死亡。一方、別の解熱剤を使っていた患者の死亡者数は38例中5例だった。
また研究班の患者調査からは、ボルタレンだけでなく、アスピリンを含むもの(市販名:バファリンなど)、メフェナム酸を含むもの(市販名:ポンタールなど)など「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」という分類の解熱鎮痛剤は、インフルエンザ脳症の発症リスクを高めたり、重症化を招く恐れがあると確認されている。
ほとんどの市販の解熱鎮痛剤は、インフルエンザでは使うと危険であり、どうしても必要な場合は、アセトアミノフェン(市販名:カロナールなど)が使われる。
ただ、素人判断で命を危険にさらさないよう、インフルエンザが疑われる高熱が出たら、医療機関で相談し、対策を取るのが適切だ。