私たち女性は、男性のセクシャルな部分はわからないことも多いですが、カップルでの性の問題や子供をもつことは、どちらか1人のお話ではなく、共有していくことが大切です。しかし同時に、とてもセンシティブな個人の問題でもあり、話題にすることも難しい部分です。
前号の「不妊の原因の約半分は男性!? 男性ができる不妊検査とは?」では、不妊の原因のうち、半分が男性も関与していること、そして、精液検査についてご案内しました。
今回は、検査の異常所見とその原因についてお話し、次号では、普段の過ごし方など、生活習慣として、気軽に相談し合えるきっかけができるような内容を、二部に分けてお届けできたらと思っています。
◆精子の異常値について
前回も表で紹介したWHO(世界保健機構)の精液検査の基準値です。
これにある、「乏精子症」「精子無力症」「奇形精子症」とはなんでしょうか。
- 乏精子症(Oligozoospermia):精子の数が少ない
- 精子無力症(Asthenozoospermia):精子の動きが悪い
- 奇形精子症(Teratozoospermia):正常の形状の精子が少ない
これらを総称して、「OAT症候群」といいます。
◆何が原因なの?
OAT症候群の原因は、生活習慣の関与など様々ですが、「精索静脈瘤」という病気が見つかることがあります。
これは、精巣につながる血管内に瘤(こぶ)ができて血流が滞り、精巣の温度が上昇することによって、精子の質や造精機能自体に悪い影響をもたらすのです。
獨協医科大学越谷病院 リプロダクションセンター 岡田弘教授によると、一般男性では約10%、男性不妊外来受診者では、30%~40%がこれに該当するといいます。
1人赤ちゃんがすぐできても、2人目ができない「2人目不妊」のカップル方に割合が多いというデータもあり、放置することで悪化するとも考えられています。
◆セルフチェックも大切です
普段から自分でも気をつけて見てみましょう。下記のような症状はありませんか? 自分ではわかりにくい場合も多いため、特に症状がない場合でも、専門医の診察を受けてみることが大切です。
- 陰嚢のふくらみ方や感触が左右で違う
- 長時間、椅子に座っていると陰嚢が痛む。精巣が引き下げられるような痛みがある
- 脚を組み替えたときに痛みがある
※ 「男性不妊バイブル」より引用
◆治療法とその効果
手術や、漢方・コエンザイムQ10の摂取で精液所見が改善するケースがあります。手術は、日帰りや入院、保険適応と自費診療、というように、方法によって異なります。
また、「精子がつくられるのに74日間」「精管と呼ばれる通り道を通って射精までに14日間」とかかるため、手術の効果が出るのは、少なくとも術後3カ月、半年~1年ほどかかる場合があります。そのため、女性の年齢によっては不妊治療との同時進行が必要であったり、早めの診断・治療が大切です。
そのほか、造精機能は熱に弱い、精子も熱や酸化に弱いという特徴から、精巣の圧迫、サウナや締め付けの強い下着の着用、ストレス、喫煙、加工食品の過剰摂取などの生活習慣が原因となりえます。
次号では、日常生活で注意できること、生活習慣の改善についてお話したいと思います。
・「男性不妊バイブル」
獨協医科大学 リプロダクションセンター 岡田弘
◆Lealta(レアルタ)/ライター:荒木 依理(不妊症看護認定看護師・生殖医療コーディネーター)
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