インドネシアで警察と軍を志願する女性に対して行われている「処女検査」について、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は11月22日、ジョコ・ウィドド大統領に対して、即刻辞めさせるよう求める声明を発表した。
団体の調査によると、「処女検査」では、医師が2本の指で膣の中の処女膜を確認する。軍や警察に応募した主に18~20歳の女性に対して行われるほか、軍将校の結婚相手に対しても検査が課せられている。
しかし、こうした検査は女性が処女かどうか、妊娠しているかどうかの判定に一切の科学的根拠がないと世界保健機関(WHO)は述べている。
、ニシャ・バリア氏は「こうした検査は、女性への差別、暴力であり、雇用機会に対する平等なアクセス権を侵害するものだ」とコメントしている。
同団体は2014年にも批判声明を発表し実態を明かした。その後、国内のメディアでも批判的にこの問題が取り上げられている。
一方で、インドネシア軍のモエルドコ将軍は、ジャカルタ・グローブの取材に対して「人の道徳性を判断する他の方法はない。なぜ批判されなければならないのか?」と回答。
また、ガーディアンの取材に対して軍の広報担当者は「処女検査」は不適切な女性を選別する手段であり、「処女でなければそのメンタリティに問題がある」と語っている。また、検査に携わっている軍の医師は、HRWに対して「軍はトップダウンであり、我々は命令に従わなければならない」と語っている。
インドネシア以外でも問題に
中東諸国などのイスラム教圏では、未婚の女性が性交渉することは認められていない。そのため、「処女検査」は結婚などの様々な場面で、道徳面から女性を判定するための慣習になっている。
しかし、近年ではこうした検査が女性に対する暴力や人権侵害と考える価値観との衝突により、度々、問題として浮上している。
イラクでは、裁判所が夫の申し立てに応じて、新婚の妻に「処女検査」を受けるよう命じることが可能だ。
さらには、IS(イスラム国)で性奴隷として捕らえられたヤジディ教徒の女性たちが、解放後に被害証明のために検査を強要され、二重の苦しみを味わったことが報告されている。
同様に、エジプトでも花嫁に対する検査が可能だ。
しかし、2011年の「エジプト革命」で逮捕されたデモ隊の女性に対して検査が行われたことが明らかになり、大きな問題に。また、2016年に国会議員が「大学入学の女性に処女テストを」と発言した際にも、大きな批判を浴びた。
一方、イギリスでも1979年までは、インド、バングラデシュ、パキスタンからの女性移住者に対して検査が行われていた。婚約者が国内在住だという嘘をついていないかどうかを判定するのが目的だったという。
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