支持者の暴力行為を煽動し議会を妨害したとして、アメリカ連邦議会下院の民主党議員が1月11日にトランプ大統領に対する弾劾決議案を提出した。
トランプ大統領は1月6日、首都ワシントンD.C.で「2020年の大統領選では選挙不正が起きた」と主張し、支持者に対して「連邦議会に向かおう」と呼びかけた。
この後に起きた暴動では、これまでに少なくとも5人が死亡している。
弾劾条項は民主党のデヴィッド・シシリーン議員、テッド・リュウ議員、ジェイミー・ラスキン議員、ジェロルド・ナドラー議員らの名前で提出された。
その内容は、ワシントンD.C.で起きた暴動のトランプ氏の直接的な責任を追求するものになっている。
テッド・リュウ議員のツイート「暴動煽動への弾劾条項です。デヴィッド・シシリーン議員、ジェイミー・ラスキン議員、私、そして下院の民主党議員によってまとめられ、正式に下院議会に提出されました。
4ページに及ぶ弾劾条項に書かれているのは、大統領選挙の結果確定のための合同会議の妨害、ジョージア州のブラッド・ラフェンスパーガー州務長官に対する「自分を勝利させるのに必要な票を見つけ出せ」という票改ざんの要求、そして自身が大統領選に勝利したという誤った主張の繰り返しなどだ。
これらの行為から「トランプ大統領はアメリカ合衆国と政府にの安全に重大な脅威をもたらし、民主主義の整合性を脅かし、政権の平和的な移行を妨害して大統領としての信頼を裏切り、アメリカの人々に明白な損害を与えた」と指摘している。
そして「ドナルド・ジョン・トランプ氏が大統領であり続けるのは、国家の安全保障、民主主義、憲法にとって脅威だ」と結論付けている。
弾劾決議案の審議
大統領に対する弾劾決議案の可決には、下院で過半数の賛成が必要となる。
下院で可決された場合は、上院で弾劾裁判が行われる。そして上院で3分の2以上が有罪と認めれば大統領は解任される。
下院は民主党が過半数を占めており、決議案は最速で13日に可決される見通しだ。
民主党のステニー・ホイアー下院院内総務は「早ければ13日にも下院での採決を実施し、可決されればできる限り早く上院での審議を始めたい」と語っている。
これとは別に、イルハン・オマル議員やシーラ・ジャクソン・リー議員も弾劾条項を提出して、トランプ氏の弾劾を求めている。
さらに下院では11日に、マイク・ペンス副大統領に対して憲法修正第25条を行使してトランプ大統領を罷免するよう求める決議案が提出された。しかし下院で満場一致の賛成が必要なこの決議案は、共和党議員によって否決された。
注目されるのは、上院での弾劾裁判のスケジュールだ。
ワシントンポストが8日に入手したメモによると、共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務は、下院が求めるスケジュールでの審議は難しいという姿勢を示している。
上院では1月12日と15日に議会が開かれる予定だが、これは形式上のものであり、最短での議会開催は19日を予定している。その場合、弾劾裁判は1月20日もしくは21日まで正式に始まらない可能性がある。
19日は民主党バイデン氏の大統領就任式の1日前。新型コロナウイルス対策など政策課題が山積みの新政権をスムーズにスタートさせるため、民主党は弾劾裁判を少しでも早く始めたいと考えている。
上院で緊急審議を開催するためには、上院議員全員の賛同が必要だ。しかし別の方法もある。
同時多発テロ後の2004年に採択された決議により、上院の多数党院内総務と少数党院内総務が賛同すれば議会を招集できるようになった。
この方法を使って、民主党のチャック・シューマー上院院内総務が、緊急審議開催しようとしている、と民主党議員の補佐官の1人が明かした。
トランプ氏を支持し続けてきたマコーネル氏が、緊急審議に応じるかどうかに注目が集まる。
パット・トゥーミー議員、リサ・マカウスキー議員など、共和党の上院議員の中にも弾劾に賛同する議員もいる。
マカウスキー議員は「私は彼に辞任して欲しい、大統領の座を去って欲しいと考えています。彼は十分なダメージを与えました」とアンカレッジ・デイリー・ニュースに語った。
トランプ氏は過去にもウクライナ疑惑を巡って弾劾訴追されたが、無罪判決が下された。
もし上院で有罪となった場合、トランプ大統領は今後大統領に立候補できなくなる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。