本庶佑教授のノーベル賞受賞が決まってから、がんの「免疫療法」の話題を目にすることが多くなりましたが、そもそもがんの「免疫療法」って何なのでしょうか?
アメリカでも最近、 "Immunotherapy"が話題になっています。日本語に訳すと「免疫療法」となるので、このふたつが同じものなのかずっと気になっていました。
そこで先日、腫瘍内科医の勝俣範之先生にインタビューした際、この件について伺いました。
免疫療法の中には、きちんとしたエビデンスがあって承認されているものと、そうでないものがあります。
~ 勝俣範之医師(BLISSインタビューより)
勝俣先生の話によれば、免疫チェックポイント阻害剤というのが、海外で話題になっている"Immunotherapy"のことで、承認されている免疫療法だそうです。そしてこれが、本庶教授の発見をもとに開発されたものです。
一方で、免疫細胞療法というのは承認されていないインチキなものらしいです。
とてもややこしいですね。一般の人が混乱するのも無理はないと思います。それをいいことに、インチキながん治療を行っている医療者が国内には沢山います。
数年前、友人が30代でがんで亡くなりました。彼女は信頼できる医師に出会うことができず、最後はこの「免疫細胞療法」を受けていたのです。最近彼女の家族と話す機会があり、そのことを知りました。
友人は「免疫細胞療法」を受けるため、地方からわざわざ東京まで出てきていました。治療にはとてもお金がかかったそうです。限られた時間とお金を根拠ない治療に費やした後、彼女は亡くなりました。
友人が闘病中、私は「何かおかしいな」と思いましたが、彼女には何も言いませんでした。国内のがん治療の現状を知らなかったためです。まさかこのようなインチキ医療が普通に行われているとは......。
このことについて、本庶さんはこう言います。
(科学的に裏付けのないがん免疫療法を)お金もうけに使うのは非人道的だ。わらにもすがる思いの患者に証拠のない治療を提供するのは問題だ。
~ 本庶佑教授(朝日新聞より)
本庶さんのノーベル賞を機に、がん治療に関する正しい知識が広まることを願わずにはいられません。
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(2018年10月19日「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)
佐藤由美子(さとう・ゆみこ)
ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院を卒業後、アメリカと日本のホスピスで音楽療法を実践。著書に『ラスト・ソング』『死に逝く人は何を想うのか』。